雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書)
雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書) / 感想・レビュー
starbro
朝井まかては、新作中心に読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか?本書は、大人向けの日本昔話ファンタジーでした。連作短編集のような長編のような不思議な感じですが、オススメは母を訪ねて三千里?「小太郎」の物語です。
2018/03/19
いつでも母さん
「昔むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました・・」確かに幼き頃に聴いた。我が子には綺麗や可愛い絵本の読み聞かせをしたし、寝る前には何度もお気に入りの絵本をせがまれた。それはそれで幸せな時間だったけれど、この本の中の寓話や民話を語り継ぐって大切なんだよね。そこから仁義礼智忠信孝悌を学んだりしたもの。朝井さん、ちょっと捻って大人向きに仕上げてあるのが好い。草どんが山姥や子狐に物語を語り、やがて福耳彦命になり語り繋ぐ。この明日彦は私達一人ひとりなのだなぁ。そう、これは大人達への物語なのだ。
2018/03/15
なゆ
雲上と雲下を繋ぐもの、それは…。ああ、なんと言えばいいのか。まかてさん流の壮大な物語の物語に、心を鷲掴みにされた。子狐にせがまれて「草どん」が語る昔話や民話がいい。「猫寺」の話なんて、もうそれだけでレビュー書けそう。のどかに子狐や山姥と一緒に聞き入る気分で、なんとも心地よい。なのにそんな心地よさが、じわじわと崩されてゆく。確かにこの危機感は覚えがある。まかてさんの想いが、登場人物たちの言葉を借りて、さらなる物語に紡がれる。ずっとずっと語り継がれてきたお話たちを大切にしたい。私も御伽衆のひとりとなって。
2018/04/09
とろとろ
「草どん」が語る昔ばなし風の物語。なんだか懐かしい感じで面白かった。この作家さん、江戸の下町風の日常を描く作品だけだと思い込んでいたし、装丁もなんだかそのような雰囲気だったので、てっきりそんな時代背景だろうと思っていたが中味は少し違っていた。時代的にも語りの口調にも確かに江戸時代らしい雰囲気を持っているが、中味は草どんの回想で、山姥や龍の化身やらが出てくると、頭の中で「まんが日本昔ばなし」の市原悦子と常田富士男の声が何時もオーバーラップしていた。刷り込みって恐ろしいもんだな。参考文献もちゃんと載ってるね。
2018/06/29
はる
森の巨草が子狐に物語を語っていく。「田螺長者」「猫寺」など、お馴染みの昔ばなしに厚みを持たせ、味わい深い人間ドラマに昇華させた朝井さんの筆致に感服。とても楽しめた。このままなら良く出来た短編集という風情だが、やがて物語ることそのものをテーマにした壮大なファンタジーへと変貌していく。作者の強い想いが感じられるが、やや拡げ過ぎな気もする。前半の昔ばなしが単なる前振りになってしまっているのが残念。
2018/11/05
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