一橋桐子(76)の犯罪日記 (文芸書)
一橋桐子(76)の犯罪日記 (文芸書) / 感想・レビュー
さてさて
原田さんの見事な筆の力もあってぐいぐい読み進めることのできる物語には、書名や章題、そしてテーマから予想される重々しさではなく、極めて清々しい結末が用意されていました。人によっては出来過ぎと感じるかもしれないその結末。しかし、あなたの心の中には、楔をグサリと入れられたかのようにいつまでも桐子の姿が残り続けると思います。そう、決して他人事ではない自らの老いを物語に投影してしまう、この作品はそういったとても怖い側面も持ち合わせていると感じます。高齢化社会を生きるあなたに是非一読をお薦めしたい傑作だと思いました。
2022/03/28
starbro
原田 ひ香は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、著者の新境地でしょうか、下流老人犯罪スレスレ連作短編集の佳作でした。これからこういう思考をする下流老人が増殖するかも知れません。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000303.000016935.html
2020/12/19
ウッディ
同居していた親友を亡くし、経済的にも苦しく、将来に不安を感じる76歳の桐子さんは、刑務所に入れば生活の不安から解放されると思い立つ。「人に迷惑をかけず、できるだけ長く刑務所に入れる」犯罪はないかと考えるあたりが、人が良く、真面目な桐子さんらしく、共感します。高齢化が進み、年金や財産が少ない孤独な老人の中には、刑務所の中にいる方が幸せと感じる人いてもおかしくない。けれど、まっとうな人生を歩んで来た人には、手を差し伸べる人がいる、そう信じさせてくれるハートウォーミングな物語でした。面白かったです。
2021/06/12
旅するランナー
一橋桐子さん(76)が孤独感を抱え、罪を犯し刑務所に入る方が楽だと思うようになる。あまり期待しないように、人生に期待しないように生きよう。そんな思いの桐子さんに、万引·偽札·闇金·詐欺·誘拐·殺人への誘いがヒタヒタと近づいてくる。人生の裏道がジワジワと広がっているように感じて愕然としますけど、まだまだ世の中捨てたものじゃないと思わせる、素敵な道も残っているようだ。読後感がとても爽やかな、高齢者犯罪小説の秀作。
2022/08/22
とろとろ
昨年10月に出版されたらしいが、今頃になって人づてに知り読む。わずかな年金と清掃のパートで細々と暮らす76歳の女性。最初に幾つかの不幸な事件が重なって日々の生活にも困るようになり刑務所に入ると楽かも…と考えるようになる。人に迷惑を掛けずに罪を犯して重罪になる罪として最後にお札偽造にたどり着くが、そもそもコピーする前に店員に止められてしまい事は上手くいかない。そうこうしているうちに、清掃のパート中に知り合ったたくさんの人達の「やさしさ」を受けて、まっとうな生活が出来るようになる、という、おとぎ話?でしたね。
2022/03/12
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