危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』
危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』 / 感想・レビュー
パトラッシュ
宮崎駿作品では『風の谷のナウシカ』が一番好きだ。アニメ版は強引なハッピーエンドで終わるが、映画を呼び水に漫画版の壮大なドラマへ引き込まれるのだから。そこに描かれる人と技術と戦争の三つ巴という永遠のテーマから生への愛情を感じる福岡伸一や稲葉振一郎、絶望の末に希望を見い出す竹宮惠子と大木毅、ナウシカに母性の象徴を見る杏や赤坂憲雄まで、人は未来に希望を持てるのかを問いかける。ナウシカは全ての人の思いを映す巨大な鏡であり、その行動と思想に必ず反応せざるを得ない。かなわぬ夢だが生前の大江健三郎に感想を聞きたかった。
2024/04/22
けんとまん1007
風の谷のナウシカ。映画版しか知らない。それでも、何度、観ただろうか。観る度に、発見がある。その時の自分自身の状態にもよるからだろう。それにしても、この本を読んで、漫画版を読みたくなってしまった。
2023/04/20
まっと
名作「風の谷のナウシカ」の魅力を有名愛好家18名が自らの視点で語る一冊。その焦点は「聖母」ナウシカ本人や他の登場人物のキャラクターであったり、作品の世界観とディテール、現実世界との対比、「人間」感等々、幅広い。インタビューの聞き手も愛好家であり、双方のコメントは自分には無かった視点も数多い。フランスで宮崎作品の背景を理解するには必読、とまで言われることを知り、改めてこの作品の凄さ、深さを認識。早速映画を改めて観よう。原作漫画にも触れてみよう。その上で本書を再読すればまた新たな世界が自分の中で拡がりそうだ。
2023/08/13
coldsurgeon
漫画「風の谷のナウシカ」をもとに、インタビューから、混沌とした危機の現代社会を読み解く。映画は、調和の取れた全体に包み込まれて終わり、漫画のそれは、読者を予想もしなかった場所に投げ出して終わるという感じ。漫画ナウシカは、様々なな読み方を許容してくれる開放系の作品だろう。老いるからこそ、死ぬからこそ人は美しいと。単純な善悪では割り切れない人間の愚かさを直視する。清浄と汚濁こそ生命であり、それにまみれながら生きていくしかない。さらにある程度自然をかく乱させることが、自然界における人間の役割ではないか。
2023/12/08
Tom
最近、漫画版を読んで「スゴいものを見た」という気持ちと、モヤモヤした感じが同居していた。気付いたのだが、やはり自分はアニメのナウシカが好きで、エンタメとしての冒険活劇やヒーローとしてのナウシカが好きだったのだ。漫画版は序盤こそそうした要素もあるが、物語が進むに連れ陰鬱な色が濃くなる。それはそれで面白いのだが、違和感は残る。大童澄瞳氏のパートでも述べられているが、ナウシカは最終的に「人間」をやめてしまう。それが一読者としては悲しく辛い。また、ナウシカという少女をあらゆる穢れを受け容れ赦す「聖母(女)」に→
2023/07/31
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