空色勾玉 (徳間文庫)
空色勾玉 (徳間文庫) / 感想・レビュー
あきぽん
日本神話にはスサノオの存在意義とか、コノハナサクヤヒメの逸話とか、どうもモヤモヤしたり納得しない部分が多いけど、この小説は見事にシンプルに日本神話を読み替えています。そして面白い。1988年刊行の古さを感じさせない和風ファンタジーの傑作。
2020/04/08
seri
大好きです。崇拝してるといってもいい。記紀神話がベースの神々の生きる古代。この本で神話の奥深さを、言葉の持つ力を、教えて貰いました。約束された永遠などない。でも生まれては亡び、常に移りゆき繰り返す命の煌めき、限りある生だからこその喜び。その身さえも滅ぼしかねない大蛇の炎、光に焦がれ空を写して流れる水。世界に秘められた感情は、決して憎しみなんかじゃなくて。空の上を、地の底を、思い合う世界は土の器にも似て。神話とは、今生きるこの世界に彩りを与えるもの。私の小さな世界は、この物語に出会って新たな色を知りました。
2014/02/09
文庫フリーク@灯れ松明の火
初の荻原規子さん。これがデビュー作なんですね。子供の時児童書として巡り合いたかったなぁ。鳥彦が美味しい。最後の一行・稚羽矢の『ところで、はじめてきくが〜』が全部をさらって行ったような。稚羽矢はスサノオなんですね。草薙の剣を思わせる大蛇の剣に、火の神(カグツチノカミ)とスサノオ、ヤマタノオロチの力を感じます。狭也はクシナダヒメからでしょうか。闇と輝・イザナミとイザナキの子供、照日王はアマテラス・月代王はツクヨミですね。勾玉はどのような意味持つアイテムとして三部作を繋ぐのでしょうか。白鳥・薄紅が楽しみです。
2010/09/24
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
古事記の世界に着想を得た伝奇ファンタジー。神々がまだ地上を歩いていた古代の日本。光と闇に分かれ烈しく争う戦乱の世に、闇の氏族の巫女「水の乙女」として生まれた狭也(さや)。自分の出生にも関わらず、否応もなく光の世界に焦がれてしまう彼女は、閉じ込められていた光の御子の末子、稚羽矢(ちはや)と廻り会います。不老不死、輪廻転生という死生観を織り交ぜながら紡がれた威風堂々の物語。アメリカで翻訳本が刊行されているとのことですが、海外のファンタジー文学に比肩し得る日本のファンタジーの代表作と言えるのではないでしょうか。
2014/08/01
佐々陽太朗(K.Tsubota)
古事記、日本書紀を題材とした古代神話ファンタジー。崇徳院の恋歌が物語を暗示する。たとえ運命が二人を別っても想いが強ければいつか一緒になることができるということか。宿因に定められた運命、それが過酷であればあるほど想いは純化していく。その想いが一瞬でもかなえられるならば、自分はその瞬間のために生まれてきたのだと思える。そんな唯一無二な人に逢えることこそが恋だろう。想いが強ければ強いほど哀しい。しかしそれだけに美しい。
2015/07/23
感想・レビューをもっと見る