あるキング (徳間文庫 い 63-1)
あるキング (徳間文庫 い 63-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
伊坂は「いつもの僕の小説とも雰囲気の異なるものになりました」語っているが、本人の弁はともかく十分に伊坂調のものに仕上がっている。しいて違いを挙げれば、やはり『マクベス』を小説のもう一つの軸に据えたことだろう。すなわち、そのことによって「宿命」が小説全体を覆うことになった。したがって「語り」もまた遥かな高みから王求の運命を語るスタイルを採ることになる。そして、トリックスターめいた3人の魔女の登場は、まさにこの故にであるに他ならない。幕切れがややもの足りないが、エピローグを付けることで円環を結んだのだろう。
2018/01/31
射手座の天使あきちゃん
「マクベス」を下敷きに伊坂さんが世に問う実験作品て感じですね <(^_^; 野球の王をたるべく生を受け、その片鱗を見せつけながらも夭折した天才「王求」の四半世紀譚 野球にも「マクベス」にも興味がないと辛いかも(笑) それにしても東卿ジャアンツと仙醍キングス、地名まで当て字にする必要あるんですかぁ?(笑)
2012/08/19
kishikan
前半の狂気じみた所がこれまでと異なり「おおっ」と思ったのですが、あと書きに本人が書きたかったものとあり納得。今回の題材は野球。PKはサッカーだったから楽天も仙台ということも意識してるかな。「フェア・アンフェア」の解釈も含めマグベスに重ねた巧みさやタイトル「ある・キング」にも含みがある。何が正義(フェア)で何が正義でない(アンフェア)のか、そして誰がどのように決めるのか。英雄、偉大な人って何・誰?兎に角、伊坂の魅力を詰め込んだ(詰め込み過ぎた?)作品。「こりゃ読まなきゃ損!」と、ガガーリンが言っていた。
2012/11/29
hiro
伊坂作品12冊目。伊坂作品を読み終えたときいつも感じるのは、登場人物のキャラクターがユニークで、登場人物達の会話が面白いということだ。でもこの作品は、伊坂さん本人も書いているように、いつもの伊坂さんの小説と雰囲気が違った。伊坂さんがプロ野球を題材に‘キング’の小説を書くのであれば、わがままだけれども憎めないプロ野球選手が主人公だと勝手に想像していたが、残念ながらまったく違っていた。『マクベス』を読んでいたら、もう少し違う感じ方をしたかもしれない。もう一つ伊坂作品の特長の他作品とのリンクはあったのだろうか。
2013/06/28
mae.dat
「Fair is foul, and foul is fair.」背表紙とかに伊坂作品らしからぬとか書いてあったりして、ちょっと躊躇したけど、そんな事は特に感じなかったな。あとがき、解説を見ると、初出→単行化→文庫化を経ながらバージョンアップを果たしてきたみたいね。更に調べてみると、新潮版は「完全版」として出ているのね。こちらが正着だったか。グヌヌ。天才打者山田王求くんの成長を記した群像劇で。特に親御さんの期待が過多すぎる嫌いが有る様に思われてね。重圧とかに押し潰されるのではと心配もしたけど杞憂でした。
2023/11/22
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