新・雨月 下 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)
新・雨月 下 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫) / 感想・レビュー
Akihiro Nishio
ついに会津陥落。悲劇を表現するためには、それなりのボリュームが求められるからか、細々とした局地戦での失敗も描かれ、ため息しかでない。最後、会津にのみ非常に厳しい処分が下り、下北半島へ転封されてしまう。しかし、関ヶ原後の徳川家康に較べれば、非常に軽い処分なんじゃないかな。これで100年恨むと言うなら、長州・薩摩は260年の恨みと言えるし、お取りつぶしになった家も多数。逆に家康の恐ろしさを思った。前田哲夫なるジャーナリストの解説が格好良く、これだけでも読む価値あり。
2017/10/10
きょちょ
戦争というものが実に悲惨なものであるかを改めて感じさせる。当然個は蔑ろにされ蹂躙される。会津を含め、制圧されたところの民(武家は自害する人が多い)はひどいものだ。これによって(実際は途中からだが)明治政府が成立するが、生き残った主だった者たちもそれぞれ数奇な運命をたどる。その後、西南、日清・日露、満州事変、太平洋戦争と続くわけだが、戦争というものはいったい何をもたらすのだろう?その延長線上に私たちが存在するのだが、実に複雑な気分。この作品より一層哀しいであろう、彼の遺作もいずれ読まねばなるまい。★★★★★
2021/08/31
ちゃま坊
二本松少年隊、会津白虎隊、娘士隊の悲話は婦女子による突撃攻撃だろう。太平洋戦争末期を連想させる。官軍による略奪や強姦行為は「満州国演義」の伏線となっていく。戦後も賊軍となった会津藩への処分は過酷であったようだ。歴史は敗者からの視点が欠けている場合が多い。この後明治政府は帝国主義に突き進み、日清日露、昭和の戦争へとつながっていく。
2018/07/03
浦
会津の結末は恐ろしく残酷だ。そして、破滅に向かいながら打つ手を打てない武士たちは別に愚かなわけではなく、日本人の組織が滅びる時はいつもこうなるだろう。そう、今だって。春介とモモの結末には驚いた。作者にとって、他の作品の主人公たちと何が違ったんだろう?
2019/11/15
蛭子戎
戊辰戦争も終盤になりついに会津城に新政府軍が押し寄せる。著者は列藩同盟を描きながら戦中の軍部を描いているのだろうか。希望的観測に固執する上層部と翻弄される現場の士官達。責任を放棄して逃げ出す指導者。板垣退助の降伏勧告は松平容保の命を助けるものでポスダム宣言を彷彿とさせる。面白かったのは登場人物のその後で西南戦争に官軍として参戦する松平定敬と賊軍となった大山格之助他薩摩軍。運命ってわからないものだ。
2017/08/10
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