ランチタイムは死神と (徳間文庫 し 22-10)
ランチタイムは死神と (徳間文庫 し 22-10) / 感想・レビュー
yanae
「死神」が出てくる中編二作。女性二人がそれぞれ主人公。さえない中年サラリーマンか「死神です」と急に正体をあかされ、誰の死期が近いのかを明かしてくる。それが自分なのか、他の誰かなのか。飄々とした死神に翻弄されつつ、命の大切さに気づいていく。死神に感情はないのだけど、少しずつ人間らしく感じられるのがちょっとせつなかった。連れていった魂のこと覚えてたりして。 昔話の「おむすびころりん」「舌きり雀」が物語のモチーフになっています。
2017/05/19
七色一味
読破。新潮文庫に入っていたのを改題。思ったよりも以前の作品だったんですねぇ。軽いタイトルにして表紙を今風(笑)にしたことで目を引いたんだから、これはこれで正解かも。最初は昔話が何のために出てくるのかよくわからんかったが、それぞれのお話の下敷きになっています。そして、つきつけられる選択が単純な「生か死か」ではないところが良かった。なかなかオススメ作品です。
2015/04/01
yu
久しぶりに柴田さんの作品を。 死神というと、私の中では伊坂幸太郎の「死神の精度」に出てくる千葉さんなんだけど、この作品に登場する島野さんも、なかなかいい味を出している。 死と生の狭間で葛藤する主人公達。幸福とは不幸とは。それは、単純に定義できるものでもないし、万人に当てはまるものでもない。 解説がよかった。 『幸福も不幸も、生きているからこそ存在する。島野が見えたことによって、彼女たちは自分たちの”生”を、そして”幸福”が何かを思い知ることになります。』この思い知るという一言がたまらなく印象的。
2015/09/07
とも
読み始めると思ってたより深くて思い内容でした。誰かと命を交換するとか命の綱引きとか 自分だったら考えるのを放棄してしまいそう…。なので島野さんに翻弄されながらも折れなかった女性二人は素直に凄いと思います。ほんの些細なことで人生は大きく変わるというのが読み終わって最後まで残った気持ち。島野さんは死神だけど彼に出会った人は生きるということを強く意識するんだなぁと感じました。
2015/11/30
エンリケ
死が身近に有る人にだけ見えてしまう死神。この本の主人公はそんな境遇になった女性二人。最初はネガティブな感情に支配されていた彼女達が、皮肉な事に死神により生きる意味を認識していく。生を受けた者全てに必ず訪れる死。でも日頃の我々はそれを忌避し、考えない。しかし存外紙一重な生と死。死を考える事はすなわち生の大切さを理解する事。生の長短と幸福度は人其々の生きざまに依る。この物語は決してステレオタイプの生命讃歌では無く、死神の言葉を通じて読者に上記の事をさりげなく提起する。読んで良かったと思わせる一作。
2015/01/07
感想・レビューをもっと見る