イッタイゼンタイ (徳間文庫 よ 23-1)
イッタイゼンタイ (徳間文庫 よ 23-1) / 感想・レビュー
kana
恐らく平成最後の読了。この世界でつくりなおしこわす男女の戦いと自然淘汰とを不穏な筆致で紡ぎ出す吉田ワールド全開のブラックユーモア溢るる本作は、今の時代の気配に大変似つかわしい。そして本筋はさておき、なおし屋の男たちの思考を書き連ねる特に前半の章のレトリックが秀逸で魅了される。例えばバイオリンをなおす彼はいいます。《バイオリンというのはじつに繊細でこわれやすい武器である。(略)その戦いはヒットソングのように三分では済まされず、数十分にわたる交響曲の唸りの中で正確に音符の連なりを撃ち落としてゆかねばならない》
2019/04/29
niisun
吉田さんの作品は本屋に行く度に気になるものの、いつも、手に取るところまで。ようやく初読みです。前半の『イッタイ』と後半の『ゼンタイ』の二部構成。後半は作者の即興で物語の行く末も定めぬまま、筆の勢いに任せて書いたというだけあって、今一つ読みづらい印象を受けました。前半は群像劇から何かが起きる予感を滲ませた面白い仕上がりな気がします。特に『パスカルのヨシアシ』は秀逸で、難しく考えても、単純に考えても、行き着く結論は似たようなもので、意外と真意をついているという、物語全体を語っているようでもあって良かったです!
2016/12/31
Eee
モノをなおすおとこたち モノをつくるおんなたち 男を守るためかはたまた男を貶めるためか 女のキモチは誰にもわからない 最後に残ったのは1人の男 どんどん吉田さんの世界に引き込まれていきました
2017/09/23
まひと
イッタイゼンタイどういうことなのか。不思議な話すぎて頭が混乱した。とにかくなおしたい、修理したい、という「修繕衝動」に襲われた男たちと、「つくる」女たちとの戦いの物語。この物語での「なおす」は「殺す」と同じ意味であるらしい、となれば男たちの「修繕衝動」はとてもやばいし迷惑極まりない。男たちに何もかも修繕されてしまうから新しく作る女たちの仕事は減り、それこそ殺されるに等しい。それを食い止める方法とは。吉田さんらしい個性的なキャラクターたちが良かった。悪魔のケーキ、とっても気になる。絶対に食べてみたい。
2020/07/27
umico
吉田さんの小説は読んでも読んでも湧いてくる…全巻読んだ!と言いたくて読んでるようなところあり。「仕事ってのは、自分の得意なことをやって、苦手なことは誰かにやってもらうってことだ。」が響きました。吉田さんの描く物語のなかではかなり現実世界のメタファーを意識して書かれているなぁという印象。男とか女とか矢鱈と言うのは好きではないし、なんか最後結局みんな恋愛的なものに絡め取られるのは納得し難いまとめ方で、私的吉田篤弘ランキングは下位だけど、この不思議な世界観はやはり好き。
2021/12/09
感想・レビューをもっと見る