帝冠の恋 (徳間文庫 す 17-1)
帝冠の恋 (徳間文庫 す 17-1) / 感想・レビュー
まこみん
主人公ゾフィーはあのエリザベートの義母であり、ハプスブルク帝国の復興を思い、王宮の唯一の男と迄言われた強く賢い女性。そんな彼女の若かれし頃の心に秘めた苦しい恋心。相手は6歳年下のライヒシュタット公…彼はナポレオンの息子でオーストリア王宮内に軟禁の身。 王宮恋愛物と一言で語れない、国内外の様々な歴史上の駆け引きに若いゾフィーの冷静さと反面揺れ動く心が読んでとても共感出来る。「真実は自分の心にあればいい。誰かに理解して貰おうとは思わない」変わりゆく時代の孤独な心は、彼女も嫁になるエリザベートも同じだった。
2016/12/14
ケロリーヌ@ベルばら同盟
晩秋の気配漂う庭園から吹き上がる風が瀟洒な窓を揺らしていた。『会議は踊る』大広間、ナポレオンの執務室、女帝マリア・テレジアの居室、数多の歴史の舞台となった、シェーンブルン宮殿。その威容は読者の想像を軽々と凌駕した。とりわけ印象深かったのは、世紀の遺児・ライヒシュタット公フランツ永眠の間。天使のように愛らしい幼子の肖像画、美しく繊細な若者のデスマスク、窓際の鳥籠には剥製の小鳥…。豪奢な檻の中で、短い生命を終えた孤独な貴公子に、この美しい恋の物語を捧げた作者も、あの場所に立ち、寂寥に深く心震わせたに違いない。
2020/05/13
ユメ
夫のオーストリア大公フランツ・カールとの関係がうまくいかないゾフィーは、禁断の恋に落ちてしまう。相手は、オーストリアにとって憎悪の対象であるナポレオンの息子フランツ。恋心すら政争に利用された時代、二人の恋は黄金の宮殿で血の如く赤く輝く。その恋は国家の存続さえ左右し、周りに傷つけられ、また周りを傷つけた。仮に現代であったとしても、許されざる恋だろう。しかし、魂で惹かれ合うゾフィーとフランツの恋は、読者の心を奪っただけでなく、最後には宮廷の人間も認めさせた。理性を超えた説得力を持つ、炎のように激しい恋の物語。
2018/09/26
豆乳くま
作者読みでしたがとても良かったし、話題の舞台『エリザベート』に繋がる壮大なお話の序章でした。バイエルンの王女ゾフィーが嫁いだのは衰退の一途を辿るハプスブルク家のオーストリア。愚鈍な夫フランツ・カールとは心通わせららない中美しい甥でナポレオンの息子フランツと出会う。フランツ多すぎ(笑)歴史の解らない私でも十分に楽しめました。秘密の想いの炎はなかなか消えず燻り続けいつも二人を苦しめ続けたがこれが元々コバルト文庫?須賀さんのお話は大人でも胸が締め付けられます。
2016/11/02
hrmt
恋愛至上主義のような欧州でも、19世紀の王家となれば話は別。政略結婚にも意義を見出し嫁いだハプスブルク家で、生涯の恋にめぐり逢うとは悲劇としかいいようがありません。お互いの孤独と寂しさを埋めるようにゾフィー大公妃とライヒシュタット公(ナポレオン2世)の心は急速に近付き、到底許されない感情は家族の情愛ではおさまらないものに…マクシミリアン皇子が不義の子であるという噂はまことしやかにウィーン宮廷内にあったそうですが、叶わなかった二人の恋がせめて報われるために、物語の中だけでもそうであって欲しいと願いました。
2019/09/19
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