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秋萩の散る (徳間文庫)

秋萩の散る (徳間文庫)

秋萩の散る (徳間文庫)

作家
澤田瞳子
出版社
徳間書店
発売日
2019-10-09
ISBN
9784198945084
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秋萩の散る (徳間文庫) / 感想・レビュー

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のぶ

澤田さんらしく歴史の蘊蓄の詰まった、5つの作品の収められた短編集だった。舞台はいずれの話も奈良時代。それぞれに関連は特になく独立した物語になっているが、その時代に入り込んだような感覚にさせてくれるものだった。表題作は薬師寺別当に配流された道鏡を主人公とした悲哀に満ちた話。「凱風の島」と「南海の桃李」は、鑑真も登場し、遣唐使を題材としている。他にも市井の学生を扱った作品もありバラエティーに富んでいる。短い作品の中に史実が詰め込まれているので、知識がないと混乱する部分もあるが、いずれも良く出来た作品集だった。

2019/11/02

まこみん

火定、月人壮士と同じ澤田さんならではの奈良(寧楽)時代の短編集。人名や地名も読みにくく、話に乗れる迄じっくり…だけど慣れるとどんどん進める。何より教科書的な無味乾燥な事柄が、時代を遡って登場人物の思いや営みが生き生きと甦る。遣唐使は人生を掛けた航海。流され大破したりの危険と悲喜こもごもの数十年ごとの派遣。亡き親友と南海の島々に石碑を建てる約束をした吉備真備。だが石の碑は一つも無く朽果てた木片があるだけ。現地へ赴いた真備は。大学寮での少年達の熱い喧嘩は権力闘争に寄って思わぬ悲劇へ。孤鷹の天も読みたくなった。

2020/01/03

ちゃとら

久しぶりの澤田瞳子さん。奈良時代の家柄、出世、妬み嫉み、呪詛ドロドロ満載、5話の短編集。中でも「夏芒の庭」は親達の因果で大学寮で起こる悲劇が切なかった。「秋萩の散る」は孝謙天皇亡き後の道鏡の話。「誰を呪いたいのか」苦しむ道鏡は、とても純粋に描かれていた。ギュッと詰まった面白い本だった。

2024/04/06

rosetta

これも『比ぶ者なき』の感想を読んでいて見つけた本。奈良時代を舞台に五つの短編。沖縄で日本に帰る遣唐使の風待ちをする阿倍仲麻呂、鑑真。遣唐使船の道標となる石碑を島々に建てようとする吉備真備と高橋連牛養。奈良麻呂の変に巻き込まれた大学寮の学生達。首天皇のご落胤と名乗る従兄弟に当たる男に訪ねて来られた石上宅嗣。阿部天皇の崩御後に下野に流された小心者で野心も持たなかった道鏡。そう言えば教科書で名前を見たような、と言う人物達が確かに生きていたと思わせるような筆致。時代の風物を見事に取り入れた存在感。

2020/11/16

Y.yamabuki

奈良時代を舞台にした五編。実在した人から名前だけ残っている人、架空の人が入り交じる。位の高い貴族、遣唐使、大学寮の学生と様々。それぞれの編で、彼らは心を揺らしながら真実に辿り着き、己を取り戻していく。印象に残ったのは、道鏡を扱った表題作。こういう道鏡も悪くない。もう一つ、弟子が機転で主を窮地から救う「梅一枝」も良かった。短編なので何れの作品も無駄が無く、一行一行じっくり味わえ、ほんの少しの明るさを持った心に沁みる穏やかな結末が心地よかった。

2020/02/06

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