馬の首風雲録 (徳間文庫)
馬の首風雲録 (徳間文庫) / 感想・レビュー
ミロリ
壮絶壮大な戦争小説。架空なのにとてもリアリティがあり展開も巧い。ファンタジーチックなシーンもあれば泥臭い回もある。読み始めは不思議な物語かと思っていたけれど読めば読むほど戦争の影が忍び寄る。戦争を生々しく感じる頃合いにはページを捲る手が止まらなくなった。4人兄弟がそれぞれ異なる道を歩む。歩み終えた者もいる。兵士にされ死闘を乗り越え隊長となった次男と、金持ちになりやがてボロボロになった長男の再会には色んな感情が込み上げた。最後の最後まで楽しめた。ほろ苦いラストだけれども。
2024/07/25
櫻田
成田悠輔氏が解説を書いてると知って手に取ってみた。なるほど単語チョイスのアクは強めだが(初っ端からドブサラダだし)、戦争のドタバタ感の表現が秀逸ー起承転結はなく、戦争が泥沼化してわけがわからなくなっている状態が鮮やかに表現されている。ドタバタ小説に見せかけて戦争の本質に迫っているようにも思う。あとがきで作者は「昭和9年生まれの私は(子供だったので)本当の戦争体験は知らない。でも子どもの空腹トラウマ経験は大人のそれとは違うはず」と仰っており、2023年現在なかなか考えさせられるコメントだった。
2023/01/12
じゃくお
筒井康隆のドタバタ戦争モノとしては『東海道戦争』が有名だと思いますが、この作品は喜劇と悲劇が混然一体としているところが特徴的です。しかし筒井康隆ってのは天才的傍観者ですね。我が身のことと思えば悲劇にもなるだろうけど、それを傍観してしまえば一転してスラップスティックになってしまいます。なんとなく反戦的な匂いはするものの、これを反戦文学と捉えちゃ作者も泣くってもんです。しかし登場人物を犬に似た宇宙人にしちゃうってのは、なんだか惜しいのかもしれないが...。
2023/07/19
テイク
馬の首暗黒星雲の犬型宇宙人サチャビ族は、国家軍と共和国軍で内戦をしている。地球人(コウンビ族)は共和国組を支援している。その戦争において一儲けしようする戦争婆さんと4人の息子。皆それぞれ離散し、戦争に翻弄されていく…初期作なので、ドタバタでエンタメ的にも面白い作品なのだが、戦争が今より身近だがかといって日常でもない時代(筒井氏は戦中は子供だが戦前生まれ)に、戦争自体は人間から切り離せない日常的事柄であり、(肯定する訳ではなく)戦争が非日常ではないことを描いている。ドブサラダやズンドローなど人物名が面白い。
2024/06/24
Dヨッシー
戦争の「混沌さ」を体験できる文学作品。入りや中間あたりでカタカナが多数出てくるので、混乱します。それでも、戦争が人の欲や残酷さ等の本性を暴き出していることをバタバタさや滑稽さを通じて描いているのがこの作品の醍醐味だとう思います。また、それぞれのキャラの個性が強く、飽きずに読み進めることができます。本当に「アク」の強い小説です。
2022/12/21
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