食べることと出すこと (シリーズ ケアをひらく)
食べることと出すこと (シリーズ ケアをひらく) / 感想・レビュー
鉄之助
『絶望図書館』の頭木弘樹が、13年の引きこもり生活のきっかけとなった病魔との戦いを、冷静にユーモア交えて活写した。普段なにげなくしている、「食べる」と「出す」が突然できなくなる、難病・潰瘍性大腸炎。安倍元首相を2度の辞任に追い込んだのもこの病気だ。病気をすると、「幸福のハードルが下がる」という。朝起きて、どこも痛くないと「すごく幸福だ」と思い。いろんなことに感動、こころ動かされる。食や病気にかかわる古今の名作が、随所に散りばめられているので、2度おいしい本となっている。
2022/11/02
どんぐり
「潰瘍性大腸炎」は、時の総理を苦しめた難病として、いまではよく知られるようになった。難病だから治りはしないし、本人が語らない限りどんなことに苦しんでいるのかは、なかなか伝わってこない。そういう意味では、当事者が自分の体験をとおして、この病気の最も切実な問題群の「食べること」と「出すこと」について率直に語っている点がたいへん興味深い。食べられない物が増えて外界に対して拒絶的になったり、漏らすことによって「尊厳」を失っていく、そのあたりの自問自答から病いがもたらす現象の意味づけや生き方を見出そ
2021/02/01
アキ
著者が潰瘍性大腸炎という難病を患い大変な経験をした事から「食べること」と「出すこと」についての考察を多くの文学を引いて説明している。特にカフカ研究者として彼の言葉を多く引用している。「食べること」は、受け入れることと説く。考えてみれば、口からおしりまで未知なるものを通してしまうなど大変大胆なことに違いない。「出すこと」について、人前で恥をかくと他人に服従しやすくなることに行き着く。コロナの今、引きこもることや、病むこと、孤独であることなど、著者ならではの「経験の先覚者」の言葉が誰の心にも届くのではないか?
2020/12/13
けんとまん1007
そう、帯にある通り、人間は食べて出すだけの一本の管。それは、体感している。難病に罹った著者の記録が、じわじわっと沁み込んでくる。日常とは何かを考える。
2022/02/28
ネギっ子gen
<編集者さんからのメールで、「食べることと出すことについて書いてみませんか」と/書くつもりはなかった。というより、書けないと思った。私の病気は下痢をしているだけで、人が面白がるような、珍しい症状があるわけではない。苦しいことはたくさんあるけど、愚痴を書いてみてもしかたない/「つらいです」のひと言で、もうそれ以上は書けそうもない。万感の思いというのは、かえって言葉にならない/ずっと病気のことを隠してきた>著者が、熊谷晋一郎氏に「言葉にしなければ始まらない」という言葉を貰ったことで、「弱い本」を目指し結実。⇒
2020/12/12
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