死と身体―コミュニケーションの磁場 (シリーズ ケアをひらく)
死と身体―コミュニケーションの磁場 (シリーズ ケアをひらく) / 感想・レビュー
アキ
レヴィナスの哲学と武道とフロイトの精神分析に興味がある著者。K1の武蔵に「相手から強いバンチを受けたときに身体はどういう反応をするんですか?」と質問し、「時間をずらして対処します」という答えに感銘する。そこから達人とは未来を先取りして構造的に勝ち続ける、これが武術の術理ではないかと読む。人生において「死んだ後のわたし」を消失点に据えて、前未来形で現在を回想するように時間意識を持つのを心掛ける。山岡鐵舟の見事な死に方のように。死んだ後のわたしに出会う。まるで「粗忽長屋」の住人のように。
2021/02/04
寛生
【図書館】3章が素晴しい。4章でなぜか、その文体の体力が衰える。内田らしいコトバの肌触りとその身体性が文体から漂うが、最初から最後まで一貫していない感じをうける。それは、これが講演原稿を集めたもので、内田が原稿を事前に書かないからなのか?だが、間違いなく思想世界に重要な貢献をしていく本。特に3章での〈時間の感覚〉が秀でている。死んだ後の私から現在の私を見るということ、時間をずらすという議論からトラウマと時間の関連性、それからラカンの時間等。5章の葬式、喪に服す議論までかなり秀でている。とても複雑な余韻。
2014/10/21
tokko
僕がまだ内田先生の本に出会う以前の本。その頃から言っていることは同じだったんだ、と驚いた。全然ブレないというか、レヴィナスやレヴィ=ストロース、ラカンといった大哲学者の影響が強烈だったんだろうな。いつか挑戦してみたいです、僕も。
2019/04/29
nrk_baby
まず、10年も前の本ってことに驚いた。絶対的な他者としての死者に自分を寄り添わせ、その地点から逆算して考え行動すること。
2014/09/13
さえきかずひこ
人の知恵の心棒に、答えが出ないことに耐え続ける、つまり問い続ける、考え続けることがある。その著者の身の構えがすこぶる生の哲学だ。本書にもそれが溢れている。何はともあれ矛盾を生きていく、という人生訓話に落としてしまうと陳腐に響くのかもしれないが、しかしそれを誰が否定できよう。趣味嗜好信念信仰の違いはあれど、病みつつ老いつつ生きているわたし(たち)はその意味、意義、価値を問わざるを得ない。ので、その杖となる一冊。
2010/10/26
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