新装版・ゲーテ全集 5
新装版・ゲーテ全集 5 / 感想・レビュー
翔亀
「タウリスのイフィゲーニエ」(1787)の感想です。この戯曲は、文学史上はゲーテの古典主義への転換を示すものとされる。その意味が私にはよく判らなかったので、念のためエウリピデスの同名のギリシャ悲劇を予習してから読んでみた。驚いた。ギリシャ悲劇を下敷きにしたというけど、せいぜいヒロインの設定を借りたぐらいかなと予想していた。しかし、勿論セリフや細かい筋は完全に別物なのだが、舞台も4名の主要登場人物もストーリーも全く同じなのだ(そんなの常識なのかな)。明らかにこれは、ギリシャ悲劇のある一点に絞って、↓
2020/10/12
twinsun
実人生に生きることと芸術という孤独な営みの葛藤。芸術家は粗暴を庇護者にその煌めきで受容されることを強要し、その煌めきゆえに目的を達するタッソーの物語は、芸術家気質への受容を求めるゲーテの本心を現しているようだ。。トロイ戦争勝利に為の贄として消えたはずのエフィゲーニェが父殺しの敵をとった母殺しの兄のオレストの訪れとディアーナ神の後ろ盾を得て、王アルカスの心を動かし、タンタロス一族の暗黒の運命を超克する「タウリスのエフィゲーニェ」は悲劇の家系に輝く未来を切り開きほっとする読後感があった。
2022/01/28
てれまこし
『ウェルテル』などで疾風怒濤運動を焚きつけたゲーテは『イフィゲーニエ』で彼の追随者を置き去りにして、自分の才能に見合わない惨めな環境への憤りから世界との和解へと歩を進める。巨人主義は残るが、ゲッツやエグモントのように悲劇で終わらない。『タッソー』は激情型と実務型という二人の人間の衝突であるが、自身を映しだす鏡である詩人を突き放しながら一類型として世界のなかに包摂してしまう。運命への抵抗が死に終わらずに生に向かっての巨人的努力へ向けられる。だが死が捨てられたわけでもない。死を乗り越えるところに生の意義がある
2021/02/04
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