盗まれっ子
盗まれっ子 / 感想・レビュー
seacalf
幼い頃、誰もが似たような作り話を耳にしたことがあるのではないか。妖精と人間の子供との取り違え伝説。それを現代風ファンタジーに仕立てている。面白いのは、森の妖精パートと、思春期前後の少年、入れ替わったふたりを交互に描いていること。こんな妖精なら近くにいるかもとゾクゾクさせてくれる。もう一方は上質な青春小説を読んでいるかのよう。単にそれだけに留まらず、隠し事を抱えたまま生きていくことの窮屈さ、そこはかとなく漂う郷愁のほろ苦さと甘い記憶、心震わす音楽、多くのテーマが織り交ぜられていて読み応えたっぷりの一級品。
2017/03/02
かりさ
取り替え子伝説を題材に描いた物語。ある日突然ホブゴブリンとして生きることになったエニデイ。何年も待ち続けて人間の子に戻ったヘンリー。彼らの視点から交互に物語は綴られていきます。人間の子に戻ってなお試練と苦悩に苛まれるヘンリーと、森の中で厳しい孤独を生きるエニデイ。これまでの記憶や感性が徐々に薄れ、現在の運命を人生を受け入れて成長していく姿は痛々しくも力強く逞しい。好きなのは森の魅惑的な世界と奇妙で愛らしい妖精たちの場面。おぞましく残酷な物語のはずなのに、温かく煌めきに満ち溢れた自己探求と彼らの成長物語。
2011/07/07
umeko
面白かったです。ホブゴブリン(小鬼)と人間の子供が入れ替わる、2人の少年の成長物語ですね。設定はファンタジーながらも、荒唐無稽な要素が物語をひっかきまわす事もなく、特殊な設定がいい味を出しています。さわやかな余韻のある、素敵な物語でした。
2011/07/26
ぱせり
とても面白かった。残酷でせつない物語であるけれど、そのまま終わらない。不思議な、それなのにとてもまっとうな成長の物語だった。そのまっとうさに打たれる。心に残るのは、森の美しさ。エニデイの読書への渇き、ヘンリーのなかからあふれてくる音楽に心が躍る。芸術から受ける感動もホブ・ゴブリンの存在も人の目から隠されている。でも、彼らが消え去ったら、私たちの世界も消えてしまうのではないか、という気がする。美しい物語だった。
2011/12/05
tom
私にとっては、4月以降に読んだ本の中で、らくらくトップテンに入る小説。設定のユニークさ、チェンジリングした主人公の2人の生活と葛藤、苦難と友情、そういったものが交じり合って、小説の面白さを堪能できました。翻訳をした田口さんもとてもすばらしい。
2011/07/31
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