ショパンを嗜む
ショパンを嗜む / 感想・レビュー
ヴェネツィア
小説『葬送』の取材記に基づいて書かれた、ショパンを巡る断章。ここでは、もっぱらショパンその人に焦点があてられ(もちろん、父ミコワイなど関わりの深い人物には紙数を割いているが)、小説のもう一人の主人公ドラクロワは、ほとんど登場しない。『葬送』を追想するにも、またそれは別として、ショパンを想うには格好の一書。それにしても、平野の調査の徹底ぶりは、彼の小説作法の一端を見る思いがして、その意味でも興味深い。私はピアノを弾けないので、せめてCDでショパンに浸ろうと思う。さしあたってはキーシンの5枚組アルバムから。
2016/07/21
Book & Travel
娘の影響で、ここ数年ピアノ曲を中心にクラシックをよく聞いている。ショパンのピアノ曲はやはり特別で、1つの楽器でこれだけ音が美しく広がるのかと、素人ながら心を打たれる。本書は平野氏のショパンを描いた小説『葬送』の取材ノートから、小説に盛り込めなかった話をまとめたもの。生涯を網羅した伝記ではないが、取材量が豊富で内容が濃く、彼の生い立ちや家族、周辺人物から、七月王政期のフランスを中心としたヨーロッパ情勢まで掴むことができるのが良かった。当時の華やかなパリ芸術界と、その中のショパンの輪郭を感じられた一冊だった。
2019/11/11
あやの
「葬送」(未読)の番外編といったところだろうか。ショパンと彼にまつわる人々の人物像。ショパンは当時からとても多くの人々に愛されていたんだと思った。彼の音楽の素晴らしさだけでなく、彼の人柄がよほど魅力的であったのだろう。ショパンの家族についても詳しく知ることができた。父のミコワイがショパンの才能を大切にし、最良の教育を受けさせたことが印象的。さらにジョルジュ・サンドとの関係も気になるところ。「葬送」は以前、断念しているが、今度は読める気がする。良い導入本となった。
2019/12/14
名古屋ケムンパス
差し詰め著者自身による小説「葬送」のライナーノーツと言っていいかもしれませんね。私もそうですが、本作品単独でも十分読み応えがあります。作曲家であり、ピアノの名手であったショパン本人と彼の作品への慈しみに溢れています。ショパンの繊細さは裏表紙を飾る彼の名刺が雄弁に語っています。
2024/10/31
新田新一
クラシックの音楽家の中でショパンが好きなので、読んでみました。これまでよく知らなかったショパンの生涯が頭の中に入ったので、有難かったです。ポーランドに生まれながら、パリで暮らした時間が長かったことや、死ぬときに家族と会えなかったことなどを知って、同情しました。パリでの最後のコンサートが詳細に書かれており、この部分は読みごたえがあります。ショパンの生涯はヨーロッパの市民階級の勃興期にあたります。そのことが、自分の内面を吐露するような、あの叙情的な数々の曲の誕生につながったのだと思いました。
2024/10/19
感想・レビューをもっと見る