雪明りの路 (愛蔵版詩集シリーズ)
雪明りの路 (愛蔵版詩集シリーズ) / 感想・レビュー
SIGERU
北海道生れの文学者で、詩人として出発した伊藤整の最初の詩集。のちにはジョイスの影響を受けた新心理主義の小説家・評論家として知られる彼ですが、21歳で自費出版したこの詩集には、若き日の素朴きわまる抒情が溢れています。ほぼ全篇に通底するのは雪のイマージュ。「一日街の乙女らに目を燃やす私を その人は いつも泣いていさめて行くのだけれども」。余韻を残して歌い終わる『雪あかりの人』は、さまざまなアンソロジーの寵児ともいうべき恋愛詩の名品です。数年前の厳冬のさなかの札幌・小樽への旅を思い出しながら懐かしく読みました。
2020/12/22
のし
序文の他に一一六篇の詩が入っています。風物を扱ったとみられるもの二六篇、恋愛に関係していると見られるもの四一篇、自己ないしは社会的なものに関係していると見られるもの二八篇、家族又は友人に関係しているもの二○篇、それらを総合的に扱った散文詩を巻末に一篇です。
2018/01/22
u
「僕はいちにち/あなたの美しい目に秘めておかうとして蒼ざめるのだけれども、/すももの花がしきりに散つても/更けてゆく春を悩ましいとあなたは感じないのだ。/呼べば/首かしげて微笑むだけで。」(「あなたは人形」より) 季節の移り変わり、深まる緑や青い雪明り……に、感じやすい少年の心が投影される。センチなのに臭くならないのは、自然の鮮やかさと、シンと冷えた、瑞々しい北の大地のためか。『若い詩人の肖像』を読んでいるので、詩の背景が自ずから見えてくる。少年が大人になるときの、おののきと抵抗、淋しさ。しづかな雪明り。
2018/02/06
う
北の自然は情熱的な言葉や物凄い熱量で描くイメージがあった。けれど21歳の伊藤整が暮らす北海道は淡々と静かで、ふっくらと豊か。此処での自然は季節を通して音が、他の土地と違うのかも、と思える表現が多い。人の手が加わらないものたちに感じ入って、そこに暮らす自分と、〝私の知つて來た數かづの姿/記憶の表にふれたすべての心〟を思い起こして抒情詩にする。涙にうるむこと 泣くこと 泣かされること が多く 良い朝や余市の浜のかがり火に心が安定しない、そういう若さが好きだ。表現は大人びている、けれど感性はみずみずしい。佳い。
2020/10/31
按摩沙弥
あまりにも若さがにじみでている詩集だが、小樽に住んでいる者にとっては、愛着のある作品。
2020/04/05
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