生きてさえいれば (文芸社文庫NEO)
生きてさえいれば (文芸社文庫NEO) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
誰もが羨望し輝く程美しく、純粋で真直ぐな春桜。遺伝性の心臓病で移植ドナーを待つ。姉の冬月との間にある溝を埋めたく、出会った瞬間「結婚しよう」と迫った相手、秋葉。春と冬を繋いでくれるのは夏と秋だから。全霊で愛した。崩れ去った過去。人それぞれ苦悩や後悔を背負っている。僕たちはいくつもの刃を持つ。知らず大切な人を傷付けている刃を。相手の素直を信じられず、勝手に穿って互いに傷つく。重く苦しい後悔。しかし著者は訴える!『生きてさえいればきっといつか幸せが待っている』夭折の著者が読者に贈る魂の言葉。受け止めた‼️🙇
2020/09/24
そる
主人公秋葉が壮絶に負の連鎖で切なくて同情的になってしまう。相手の春桜の方も。「血の繋がり」って結びつける事もあるが縛られて嫌になることもあるなあ。周りの人間も負の感情強いし嫉妬するし恋路も邪魔されまくりなんだか明るい話ではなかったけど、中心の2人は楽しそうで応援したくなって読み進められる。なのにこんな状況ではもう戻ることはできないのか⋯。辛いな。「でも、どんなに鈍感でも、わかるわ。嫌われている人と一緒にいるとエネルギーを使う。何をするにもびくびくしてしまうし、顔色を窺ってしまう。だから余計嫌われるのよ」
2019/09/17
相田うえお
★★★☆☆18114 本を開いただけなのに『余命10年』の余韻や小坂さんの顔が頭に浮かんできて目頭が熱くなってしまいました。本を閉じるまで涙腺は持ち堪えてくれるだろうか?などと心配しましたが、作品のベースは愛と家族の物語。生きていれば という言葉が心に響きました。本の最後にある『編集部による解説』を読んで...後から出てきた原稿だとは思いました。たしかに推敲の程度は荒いと感じますけど、書きたてホヤホヤのナマの原稿を読ませて頂いた様な有難い気持ちになりました。家族と担当された出版社の方々に感謝です。
2018/12/24
速読おやじ
余命10年の著書の小坂さんの遺作。亡くなってからご遺族が見つけたもの。書かれた時期、推敲の有無も分からないという。本作も病院が舞台のひとつだ。やはり著者の病気の陰が垣間見られる。春桜と秋葉、二人とも家族が欠けている。その欠けたものを意識的か無意識なのかお互いが求め合っていたように感じた。結局、その感情は長い時間をかけてのラストシーンで初めて恋というものに昇華したのではないだろうか。どうしても、著者が病気で亡くなったという事実に引っ張られる。本作品では春桜を死なせたりしなかったことが、逆に痛ましい。
2020/11/19
モルク
「余命10年」の小坂さん。その刊行前に逝去され、その後ご家族から提供されたのが本作だそうである。心臓病で入院する叔母春桜が、宛先も書かずにいる手紙を見つけた甥の千景は、それを届けるべく大阪に向かう。春桜が読モで憧れの的だった大学生の頃の恋愛。美人で魅力的でなければ、うざいただの痛い人だっただろう。読み進めるうちに、彼女の苦悩、純粋さを知る。余命を覚悟していた作者は彼女に自分を反映していたのかな。私はベストセラーでも恋愛小説をさめた目で見てしまい感動することは少ない。だが本作では素直に涙を流すことができた
2021/09/16
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