【2024年・第22回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作】ファラオの密室 (『このミス』大賞シリーズ)
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「【2024年・第22回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作】ファラオの密室 (『このミス』大賞シリーズ)」のおすすめレビュー
『このミス』大賞受賞作『ファラオの密室』は波瀾万丈な展開と読後感がすごい。ミイラが古代エジプトで事件捜査!?
『ファラオの密室』(白川尚史/宝島社) 「このミステリーは間違いなくすごい!」。そんな確信がひたひたと心を満たしていく。毎年、読む人に驚きと感動を与えてくれるミステリーの新人賞『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作は、今年も素晴らしいのだ。栄えある2024年・第22回の大賞受賞作は『ファラオの密室』(白川尚史/宝島社)。紀元前1300年代後半、古代エジプトを舞台とした物語だ。それだけを聞くと、「古代エジプト!? 全く知識がないけれど、物語に入りこめるだろうか」と感じる人も多いのではないだろうか。かく言う私も、その一人だった。読み始める前は、それこそ砂埃舞う砂漠を一人彷徨うような不安を感じていたはずなのだが、ページをめくれば、そんな不安はどこへやら。古代エジプトを舞台に繰り広げられるミステリーは、スリルあり、笑いあり、涙あり、感動あり。読後、こんな爽快な気分にさせられるとは思いもよらなかった。 主人公は、王墓(ピラミッド)の内壁に呪文を刻むという大仕事を主導していた上級神官書記のセティ。半年前に命を落としてミイラにされたセティは、どういうわけか、心臓に欠けが…
2024/1/9
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2024/1/15
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2024/1/14
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2024/1/13
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※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年2月号からの転載です。 とんでもない設定の作品が第22回『このミステリーがすごい!』大賞を獲った。 時代は約3400年前の古代エジプト新王国時代、主人公にして探偵役は死から蘇った被害者本人。 特殊設定ミステリー流行りの昨今とはいえ、ここまで来たら究極である。新人賞にこの設定で挑んだ著者の度胸には、ただただ脱帽するばかりなのだが……。 取材・文=門賀美央子写真=山口宏之 「実は、第21回の『このミス』大賞にも応募していたんです。作品はかなりガチガチの本格クローズドサークルものでしたが、残念ながら1次すら通過できませんでした。がっかりしたものの、講評では『本格のセンスには光るものを感じます』というような評をいただけたので、その言葉を受けて考えたんですね。落選の理由はトリックそのものではなく、ドラマやキャラクター作りに問題があったのだろう、と。ですので、課題として、舞台設定も含めて“魅力的”と感じてもらえるなにかを配置しなければいけないと考えたのが、本作のスタートになりました。次に、戦略として、本格色は少し薄めようと思いまして。本当は…
2024/1/13
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2024/1/12
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【2024年・第22回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作】ファラオの密室 (『このミス』大賞シリーズ) / 感想・レビュー
starbro
『このミステリーがすごい!』大賞受賞作を毎年楽しみにしています。2024年・第22回受賞作品は、古代埃及木乃伊特殊設定ミステリファンタジーでした。私はエジプト好きなので楽しめましたが、そうでない方は、微妙かも知れません。🐪🐪🐪 https://tkj.jp/campaign/pharaoh/
2024/02/20
bunmei
初めて手にする古代エジプトが舞台の小説。内容とカタカナ名についていけるか心配だったが、読み始めると次の展開が気になるミステリーとして一気読み。また、墓王建設にかける王家の威信、宗教に対する信仰心、奴隷との格差社会等、当時の世界観を改めて知る機会となった。墓王建設中に意図的な落盤事故で亡くなった神官のセティが冥界から舞い戻り、事故の真相と自分を殺した犯人捜すファンタジーと、ミイラ消失事件の謎に迫るミステリーが並行して展開。そこに、奴隷少女カリがキーパーソンとなり、2つの謎とセティの秘密が明らかになっていく。
2024/01/19
ALATA
初読み作家さん。死者が蘇る、探偵役がミイラ、ピラミッドから死体消失、不可能犯罪、迫るタイムリミットとワクワク感満載のこのミス大賞作。まず、タイトルとカバーデザインに心が持って行かれました😭ただ、ファラオの復活の儀式が遠因でセディが死に至るというところは?でした。最期のエピローグも悲しいところです★4※ 島田さんの「水晶のピラミッド」もそうだがこちらも奇想天外なトリックで絶妙。そして、ピラミッドと美女の取り合わせはかかせないといったところ・・・
2024/04/12
うっちー
このミス大賞の中でも秀逸。ミステリーに拘らない作品も期待します
2024/02/01
まえぞう
今年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作ですが、謎の中身よりは、古代エジプト、一度死んだ主人公が復活して自分の死の謎を探るという、舞台の設定が良いと思います。アテン神を唯一神として崇めたアクエンアテン王を巡る混乱を元に戻すための策略が次第に明らかになり、最後の1/3は一気に読ませてもらいました。
2024/04/09
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