唐草物語
唐草物語 / 感想・レビュー
(C17H26O4)
古今東西、歴史上の人物や故事の紹介から出発し、澁澤氏が思うままに膨らませた幻想譚。氏の自由な発想と縦横無尽に何気なく繰り出される知識との唐草模様を味わう。楽しみながら書いていたような雰囲気が伝わってくる。お馴染みのメタ発言的なのも面白い。頭痛の原因は前々々々生にあり、と安倍晴明に告げられた花山院の不思議な体験を描く『三つの髑髏』、始皇帝を騙した徐福の法螺話が900年の後にちゃっかり真実になっていた『蜃気楼』がお気に入り。蹴鞠に取り憑かれた大納言成通卿の話『空飛ぶ大納言』も愉快。
2019/08/14
猫風船
河出書房新社版。装幀が素晴らしい。 平泉金色堂を訪ねた澁澤さん、乗り込んだタクシーの運転手は、なんとかの藤原清衡(「金色堂異聞」)。奇想天外、楽しい物語集です。
メイロング
いつもの澁澤さんって感じで、あまり小説らしくない。短編集だからかな。表に出ている物語より、根っこの地下世界が豊か過ぎてぜいたくな気分が味わえる。作者の守備範囲がヨーロッパのみならず国内にまで及んでいる恐ろしさ。
2013/05/06
野乃子
表題にも似て、行字を追ううち意識が巻きこまれ迷い込むように読み進めた小品集。 話自体の読み易さや面白さもさることながら、都度都度でなんとはなしに現れる登場人物の喩え話やふとした表現が胸に留まり、読了後も忘れられない。 その強い貫通力と柔らかい拘束力のある感性と表現こそ他の誰でも無い澁澤龍彦が澁澤龍彦たる力、魅力なのだと思う。
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