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ねむり姫

ねむり姫

ねむり姫

作家
澁澤龍彦
出版社
河出書房新社
発売日
1983-01-01
ISBN
9784309003566
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ねむり姫 / 感想・レビュー

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夜間飛行

14才で成長を止めたまま眠り続ける珠名姫と、現実をたくましく生きる弟のつむじ丸の物語。盗賊になったつむじ丸はある日、姫を拉致して阿弥陀講を開き、人々から金品をせしめようとする。そんな騒ぎをよそに来迎図の夢を見ている姫は、弟の運命が二転三転する中、無邪気に眠ったまま運ばれ流されていく。何十年か経って、宇治川に棄てられた姫の小舟が、老いたつむじ丸の行じる水想観に入りこむ。紡錘(ツム)のような小舟がつむじ丸と出会うという「渦」、そして夢と現実の作る「螺旋」のイメージこそ、作者の書きたかったものではないだろうか。

2015/02/09

まさむ♪ね

ああ、きらら姫!一度でいいから貴方様にお目にかかりたい。きっと、あの極北でひときわ優雅に光りかがやくきら星のごとく、高貴ででもどこか淋しげで、近寄ると目も開けていられないほどの美人にちがいない。そうして、貴方は柄杓の星船に乗り、燃え立つような白銀色の毛皮を纏った六頭の猿どもを従え、ふわり地上に舞い降りるのか。珠名姫、万奈子姫、翠翠、妖艶で寂寥感漂う姫君たちに為す術もなく心を持っていかれたけれど、狐につままれたようなという表現がこの上なくしっくりくる、星の夜空の美しい「きらら姫」が一番好き。

2015/03/06

メタボン

☆☆☆☆ 狐につままれたような話の数々に心地よく幻惑させられた。14歳のままの青白い体で眠り続ける球名姫と腹違いの兄つむじ丸の水観想上での不思議な衝突が強い印象を残す「ねむり姫」。何とも妖艶な画中の美女に翻弄される「画美人」の2作が特に良かった。語り口や昔の日本を題材とする手法に芥川テイストも感じられる。

2015/10/15

しゅんしゅん

ねむる前に、昔々あるところに〜と枕元で読んでもらいたい御伽噺のような幻想小説。格調高い文章であるのにも関わらず、なんとも柔らかくくだけており、心の芯からほぐしてくれるようなやさしい効能がある。手首を切断されても眠り続けるねむり姫、夢の場面を引き寄せる万奈子姫、夜になると絵から抜け出して会いにくる翠翠、ほとんど名前だけで登場してこないきらら姫、魅惑的なヒロインが鏤められている。作者がときおり、知られているとは思うが〜と話す内容が全然聞いたことない難しい話だったりするのに、それが厭味に感じられないのが素敵。

2021/07/06

ニミッツクラス

83年の1200円の初版を読み、久しぶりに澁澤温泉にどっぷり浸かった。82-83年の「文藝」初出の6編を収録。最後の短編は83年8月号掲載で、それを同年11月初版の本書に入れたのだから速攻極まれりだ。オチの強弱なら、この澁澤温泉はぬるい。「ねむり姫」も「きらら姫」も当事者そっちのけだ。が、その効能は読者のコリを揉みほぐす。夢かうつつか幻か、幻想奇譚好きの琴線に触れる。個人的には、オンに意味が無いと言う題名の「ぼろんじ」が好き。虚無僧のことをボロンジと呼ぶのだって信じてしまったではないか(笑 ★★★★☆☆

2016/11/01

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