サラダ記念日
サラダ記念日 / 感想・レビュー
やすらぎ
ありふれた日常の心地よさ、爽快感、懐かしい記憶に染み入る。世の中はこんなに明るく清らかだったのだろうか。毎日が記念日。揺れ動く日々の流れを感じる、若き日の歌集1987年。…私のほほえみで友が楽しくなれば、その友の友も前向きに。私の知らないところまで、笑顔が溢れ続いていく。そんな夢を見させてくれる俵万智氏。私も刺激され…「波打ちぎわ探し続けた風のこえ君の背中も夕日に染まる…」「雨雲に流れる先に晴れ模様この道いつも降りみ降らずみ…」…風に吹かれて巡りあう。空を見上げて語りあう。これまでもこれからも、心に花を。
2021/11/18
カフカ
俵万智さん20~24歳の時に詠まれた歌。口語短歌なので非常に読みやすく、これなら自分でも詠めるのでは?と思われがちだと思うのだが、実際に自分で詠んでみるとその発想の豊富さや新鮮さ、言葉選びの秀逸さ、また31音で短歌を詠むことの難しさに気付かされる。簡単に詠んでいるようで、実は作り込まれた歌なのだと思う。とくに心に残った歌「思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ」「午後四時に八百屋の前で献立を考えているような幸せ」「シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおり」
2023/10/27
ばりぼー
筒井康隆「カラダ記念日」(「薬菜飯店」所収)が出た時に、その本歌として読み込みましたが、蔵書を点検したら2冊出てきました(笑)。ミリオンセラーの大ブームから約30年も経っているのですね…。「午後四時に八百屋の前で献立を考えているような幸せ」(八月の朝)、「今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海」(夏の船)、「奪い合うことの喜び一身に集めてはずむラグビーボール」(サラダ記念日)、「金曜の六時に君と会うために始まっている月曜の朝」(元気でね)などなど、瑞々しさは今だに失われていません。
2016/10/05
aika
久しぶりの再読。一首一首が放つ鮮烈さに、初めて読んだときと全く変わらない衝撃を覚えました。学生時代に知った「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」と「寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら」は、一目見たときからずっと心の中に住み着いています。今回特に気に入った歌は「サ行音ふるわすように降る雨の中遠ざかりゆく」。比喩に魅力され、微細な心の揺らめきが、こんなにビビッドで易しい表現で切り取られるなんて…とため息がこぼれます。読み手の感性まで研ぎ澄まされるような心地になりました。
2023/02/08
メルト
口語の短歌。有名な割には読んだことがなかったので読んでみた。恋愛の歌が多めだけど、本当にちょっとした、何かの拍子に忘れ去られてしまうような感情を、ものすごく細かい目の網ですくい上げたような、そんな歌が多くあって、読んでいて心地いい作品だった。個人的に好きなのは〈まちちゃんと我を呼ぶとき青年のその一瞬のためらいが好き〉何気ない一瞬が、いつも使っている言葉で、こんなに綺麗なものとして表現される。ほんとうにすごい作品だった。
2018/03/29
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