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硝子生命論

硝子生命論

硝子生命論

作家
笙野頼子
出版社
河出書房新社
発売日
1993-07-01
ISBN
9784309008486
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硝子生命論 / 感想・レビュー

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rinakko

再々読。透明を許されず透明を志向する…観念の硝子、その死体(…だけでもう美しい)。ヒヌマ・ユウヒという生き辛さを抱え込んだ人形作家の造形といい、そんな彼女が作る少年人形の設定(そも人形=非生命であるのにそれは必ず死体人形であらねばならない…と被せてくる)とその魅力(上半身は少年で下半身は恐竜とか…!)といいすこぶるにツボな作品である。ひさしぶしに読み返してみて、あらためて後半の展開が面白かった。一冊の書物に生まれ変わる語り手の日枝無性と、人形恋愛の同志たちによる“あらゆるタブーを破る事で生まれる国家殺し”

2019/08/30

不在証明

私の手元の死体人形。氷にくるまれた冷凍死体、私が、殺した、という設定。毎日顔を合わせる少年は、崩れることなく罪を形作り、悠久の時を鎮座している。殺人罪を犯した私の日常生活は、娯楽の充足した”私の部屋”という名の刑務所で営まれている。かりそめにも私を捕まえる者はいない。浸蝕されることも。ここにいる他者は介入してくることのない入れ物で、私と完全に分離している。私が、私が。ここには私しかいない。私で満ちているこの部屋は居心地が良い。

2015/11/23

rinakko

再読。「水晶内制度」への繋がりをコロッと忘れていた。あちらの再読はも少し先にしておきたいのに…。

2009/06/25

amamori

己の女性身体を忌避する果てに この書物身体に封じられた語り手と彼女の神の物語。しかしその体裁を整える文よりも 見たこともないものを描写する文章が圧巻。 <生きていた、そして死んでしまった硝子を見た事がある。透明度を黴させ、表面だけはかろうじて樹脂の薄皮のような輪郭を保ちながら、内側は際限なく細かく、微塵にひびわれて濁っていた、まるで歳月を経た眼球のような不透明な硝子。かって生きていたという証拠を残している、そしてまた永遠に腐ることのない、硝子で出来た死体の形でそれは現れてきた。・・>

2010/11/29

あ げ こ

男性嫌悪、生身の男性への失望を、人形愛へと昇華させた女性達。密室空間で営まれる、少年の姿をした死体人形との疑似恋愛。外界に対する悪感情はすべて、死体人形との恋愛に於いて、彼等に吸収させることで癒される。常識的な自分を保つ為のごっこ遊び。だが女性達は次第に、小市民として振る舞う上で感じていた抑圧からの脱却を目指し、自分達にとって最適な世界の誕生を望むようになる。物語後半、世界の変容、新国家設立を語る言葉は自信を得て力に溢れ、凄まじい勢いを誇る。圧倒されながらも読む手は止まらず、激しい言葉の流れに身を任せた。

2013/12/15

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