極楽 (笙野頼子・初期作品集 1)
極楽 (笙野頼子・初期作品集 1) / 感想・レビュー
耳クソ
この本全体を通してのテーマは「皇帝」に詰まっているのかもしれないが、「極楽」で展開される「私」が客観的に記述されながらも内側から自壊していく様を、抽象に具体性を持たせながら、あくまで全て事後的に書く、という技には度肝を抜かれた。小説の自由がなんのために自由であるべきなのかを教えてくれる。
2021/05/13
踊る猫
恐るべき強度を孕んだモノローグが展開される。登場人物同士の活きた会話が殆ど交わされず、起きた出来事だけが延々と「説明」される。他者との断絶が生々しく描かれ、特に「皇帝」に顕著なのだけれど引きこもり願望が強い、自分だけの世界を大事に守りたいという欲望に憑依された人々が「憎悪」を剥き出しにしつつそれを外に攻撃的な形で放出するというよりは己の身を切り刻むような自虐へと転じていく。この頃はまだ幻視者/ヴィジョナーとしても資質は現れているとは言い難い。引きこもり小説ということで『地下室の手記』を想起させられもしたり
2016/04/22
渡邊利道
群像新人賞の表題作(84)、受賞第一作の「大祭」(84)、そして最初の長篇『皇帝』(87)の三作。現在から見れば非常に端正な寓話的な語りの向こうに作者自身の肖像を浮かび上がらせる三作。主人公がみな男で、とくに最初の二作ではある意味で非常に抽象的な舞台になっているのが特徴。『皇帝』は、物語全体が以後の作品の雛型のように感じられ、とくに「私は私ではない」という小説を貫くテーゼがとてもいろいろ考えることができて面白い。
2017/03/21
月のピエロ
凄い。ただただ凄い。 研ぎ澄まされた文章。
2016/01/31
11032nori
やっと読み終わったー!高校、大学、社会人と読んでは挫折を繰り返し、ようやく。いつも「皇帝」で躓くのだけど、今も全く消化はできていない。薄皮に包まれたように、うっすら奥にあるものが見透せそうなのに、どう足掻いても看破できない。そのむず痒い距離感が、3度読み返すだけの困難さと焦がれをもたらすのだと思う。
2015/09/22
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