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夢の死体 (笙野頼子・初期作品集 2)

夢の死体 (笙野頼子・初期作品集 2)

夢の死体 (笙野頼子・初期作品集 2)

作家
笙野頼子
出版社
河出書房新社
発売日
1994-11-01
ISBN
9784309009483
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夢の死体 (笙野頼子・初期作品集 2) / 感想・レビュー

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梟をめぐる読書

『極楽』や『皇帝』の収められた初期作品集[Ⅰ]は、現世に対する作者の怨念をすべて吐き出したかのような、復讐と憎悪の書だった。対して続編となる本書では、「私」の意識と外界とは「水」のイメージによって隔てられ、作者はその内側から世界を見通しているかのような、連作の印象を与える作品が多くを占めている。その変化の理由を言い当てることは難しい。ただ作者はここで世界全体を憎悪することを止め、より日常的な障害や「生き辛さ」の正体へと目を向け始めている。観念の作家から生活の中の「悪」を描く作家へと、生まれ変わりつつある。

2016/04/25

踊る猫

安直な感想になるが、笙野頼子氏は『極楽』では外に出ていなかったというか他者ときちんと向き合っていなかったというか、モノローグだけで作品を成り立たせようとしているといった印象を感じていた。それに比べるとこの作品集では外をきちんと向いている。それは夢想の産物であるだろうしあるいは現実に存在する醜い「男」であるだろう。そうしたものを見据えて、自ら外に出て理解を超えたものと対決しているという印象を抱くのだ。全編に「水」のイメージが瀰漫する作品集であるし、あるいは粘液に包まれたもの(アメーバやナメクジ)を描いている

2016/04/23

atomos

憎悪!憎悪!憎悪!だった初期作品集Ⅰとは打って変わって、詩的な水のイメージに満たされた作品集だった。もし微生物小説アンソロジーを編む人がいたら、「虚空人魚」を収録してもらいなあ。

2014/05/04

rinakko

再読。“年月が経って薄白く色の褪めて了ったオパールがある。その中には昔から一匹の生物が封じ込められていた。何百年も前にはその水色の半透明な石の表面を破ろうとあがき、生物は石の内側で炎を飛びめぐらせ、プリズムを陽光ごと嚙み砕いて吐き散らしたりした。そうするような憎しみと力とを併せ持っていた。その生物の名前は“虹”と言って、それが苦しんで吐く光を人はオパールのきらめきとして愛でたのである。”

2019/08/06

水や硝子や空気よりも透明で物体性を持つ何か。初期三部作の憎悪は無力・虚空に変化しドロドロした感情で自分しか見てなかった彼女が、異質だけど透明な何かを通して世界を見ようと無意識ながら奮闘しているように思える。この無力感は私にもあるけど彼女のソレとは別のイメージなので上手く文章が入って来なかった。そして、前三部作と比較して女らしい文になっている。上手く説明できないのだけど。それは男として書いた前作と女として書いた今作という事ではない次元の話だと思うんだけど、どうだなんだろう。

2013/05/13

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