中上健次論: 愛しさについて
中上健次論: 愛しさについて / 感想・レビュー
giant_nobita
悪文。一文一文が長く言い回しも迂遠で、文同士のつながりもまた滑らかではないため、意味が取りづらい。「夏芙蓉」と「夏ふよう」の書き分け、「水/炎/血」のイメージの扱いや『奇蹟』の矛盾にまつわる解釈など、刺激的な発見や着想はいくつもあり、著者が中上健次の小説をよく読み込んでいるというのは伝わってくる。しかし論証はいい加減である。「皮膚」「呼吸」「うつほ」といった言葉の使い方に典型的に見られるように、自己陶酔的なレトリックで誤魔化している箇所も多い。文章に魅力のない文芸批評は駄目だなと痛感した。
2020/04/19
zumi
中上健次を最も「愛する」偉大な批評家が最も「哀」に満ちた追悼文を書いた。例えば、「夏ふよう」「夏芙蓉」の差異ーーそれは、秋幸の世界から路地へと植え替えられたーーに始まり、余計なものをそぎ落とす秋幸と「草のフェティシズム」を絡めると同時に、自然との往還の中の呼吸を外部〈女〉との交わりと結びつけ、「皮膚=テクスト」を巡る問題を提示する。変奏する自然のテーマを物語の構造に絡めるとともに、他方で「日本的自然」ーー差別をあらかじめ内包するーーを民俗学的構造と結びつける。秋幸は再誕する。中上健次作品の愛読者は必読。
2014/01/17
かいこ
『紀州』と『奇蹟』を再読してからまた読みたい
2018/06/06
かいこ
猛烈に秋幸三部作を読み返したくなった。
2018/01/27
なめこ
語弊があることは承知で言うともはや「感動的」ですらある中上健次をめぐるテキスト論。著者と生前の中上との「個人的な」思い出が記されたあとがきはもとより、その批評の緻密な大胆さというのか、思いも寄らぬところから突然刺し貫かれるような鮮やかな衝撃を受ける本論部分も素晴らしく、中上健次という存在の魅力に強く惹きつけられた著者による、一編のとてつもない「恋文」のようであった。
2015/05/19
感想・レビューをもっと見る