ユルスナールの靴
ユルスナールの靴 / 感想・レビュー
Kajitt22
『東方綺譚』に触発されて書棚から探してきた。「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ」この冒頭の文章だけは何故か覚えていた。ユルスナールの著書、主に『ハドリアヌス帝の回想』『黒の過程』とユルスナール、そして須賀敦子さんのまさにこの三者の「めぐりあう時間たち」を丁寧に書き込んであり魅力的だ。手元にあるのは1996年の初版本で、ユルスナールは未読だったはずだが、その時の読後の感想はどうだったのだろう。我ながら霧の中です。再読。
2018/10/02
メタボン
☆☆☆☆ 静謐で端正な文章は読むのに心地よい。ユルスナール自体に関心はなかったが、いつか読んでみたいと思わせた。「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。行きたいところ、行くべきところぜんぶにじぶんが行っていないのは、あるいは行くのをあきらめたのは、すべて、じぶんの足にぴったりな靴をもたなかったせいなのだ、と。」
2013/06/28
夏
フランスの女性小説家であるユルスナールの生涯をテーマにした連作短編集。小説というよりも、作者がユルスナールの跡を追う様を見ているようで、本当に小説なのかと疑うような部分も多かった。小説ではなく作者の実体験なのではないかと思わされる。ユルスナールという女性小説家をこの本を読むまで全く知らなかったのだが、物語の主人公と共にユルスナールを追ううちに、自然とユルスナールへの興味が湧いてでてきた。機会があれば、ユルスナールの小説を読んでみたい。星3.5。
2022/05/31
井月 奎(いづき けい)
深い思考と日常の出来事は実は同等に大切なことなのです。著者の筆の冴えはむしろ何気ない日常の表現にあらわれて、それがどれほど美しくて切ないことなのかを知らしめます。そしてユルスナールとようちゃん。奔放な生活と深い思考を自らの生き方として二十六歳で処女作を発表するユルスナールと、禁欲的な生活と修養をおさめて二十五歳で早逝してしまうようちゃん。正反対でありながらどちらもストレートで同時に歪んだ生き方をした女性ですが、それぞれ神を、小説を介して命を世に放ちました。著者にはそれがまぶしかったのではないでしょうか。
2015/09/04
あいくん
☆☆☆☆須賀さんはフランスの作家ユルスナールに魅せられていました。ユルスナールも須賀さんも旅が好きでした。ユルスナールは「私にとってのすばらしい歳月、それは旅あるいは野営や前硝地で過ごした日々であった」と書いています。須賀さんも「きっちり足にあった靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ」と書いています。ユルスナールは20世紀のフランスを代表する作家です。1903年にベルギーで生まれ、1987年に84歳で亡くなっています。1981年にアカデミー・フランセーズの最初の女性会員に選ばれました。
2018/01/11
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