魔女の息子
魔女の息子 / 感想・レビュー
buchipanda3
2003年の小説。目の前の現実を避けるように生きるアラフォーのゲイのライター。彼が通うハッテン場の描写、特に傲慢な欲望の場面が強烈だった。臨場感が半端ない。思わず没頭して読んでいた。ただ、それ以上に彼の母親が良かった。一見すると老いて恥じらいもなく思うままに生きる姿。でも理屈ばかりがまかり通る世間の正しさってどうだろう。理屈に囚われ過ぎると生き方が窮屈になる。理屈の世界と現実の世界は違う。そのことを気付かせる彼の母親の解放の呪文が印象的だった。さすが魔女。
2020/03/16
白のヒメ
アル中で母親に暴力を振るっていた父親。父親が死んだ後、76歳という老齢で男と付き合い始めた母親。ゲイで40近くになっても母親と団地で暮らす主人公。罪まではいかなくても、不道徳的な事をしてしまう自分に嫌悪感を抱きながらも、そういう生き方をやめられない主人公の苦悩が苦しい。けれど人と違うという事が怖くなるのは、そんな自分でもやっぱり生き続けたいと思うからなのだと気が付いた時、主人公は本当の意味の愛を知るのだ。・・・平凡な私の知りえない境遇の心境だった。けれど強く胸を打った。文藝賞受賞作品。
2015/12/27
むつこ
ゲイの主人公のお母さんに恋人ができた話らしいので読み進めてみると、思った以上にエロく、その性描写に読まなきゃよかったし、主人公のちょっとした会話にカチンとくる勝手さに共感もできるけどめんどくさいヤツと思った。後半、お母さんの「絶対にしちゃいけないことなんかない」という言葉と姪が似た性格になりそうで主人公の家族の女性の面白さにもう少し長く物語が続いてほしかった。文藝賞受賞作品なだけある。
2014/12/22
パグ犬
第40回文藝賞受賞。 ゲイ社会での描写が生々しすぎて、何度も読む手が止まりかけたが、なんとか読了。 ゲイの主人公が欲望に身を投げる様子が、退廃的な自由の中で苦しげに描かれている。行為の危険性を理解しつつ身を投じていた筈の人たちが、気付くと立場を違えている。そこから生じる主人公の葛藤。実体験かと思うほど現実的に描かれている。
2016/02/18
nonpono
著名なゲイでありライターとして名高い伏見憲明の文藝賞受賞作。2003年、いまから30年前のハッテンバの生々しい様子がわかる。合法だったラッシュに音楽はトランス、過去の遺物のようにでてくる。30年前のゲイシーン、エイズも、ものすごく大きな存在として出てくる。今の今、LGBTQ世代の方はこの本をどう読み解くか、考えちゃいました。母である魔女の来し方は良いとおもう。自由に生きればいいのさ、人が人を好きになるなんて、理屈じゃないもの。淡々と物語は進むけど、どこかに熱を体温を感じる一冊。
2023/08/04
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