黒薔薇
黒薔薇 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
主人公の西洋文化が到来した明治からであろう父権制度に対し、蓮っ葉な心の中での啖呵はちょっと清々しいです。世間の善人だからこその気の利かなさや冷やかしが描かれていてより、同性に恋焦がれて永遠に別れてしまう結末が切ないです。少女は脆くて世知辛い存在だと思います。
2012/03/02
152
自分も「青色病(ブルーシック)」だ・・・。最初の方の布団のくだりとかが好きだった。
2012/10/10
壱片時乃
少女の頃抱く同性への慕情はいつしか儚く薄れてしまうものを、二十二歳になった処女が未だ抱くそのabnormalな恋慕の情は、章子にとて懐かしいものであると同時に戦わねばならないものでした。表題作では女性が女性を愛することについて、現代の百合作品では類を見ないほど圧倒的な濃度で語られます。『屋根裏の二処女』を読んで好きだったなら是非続けてこの本も。他に掌編『夏草』は終始明るく可愛くてとても軽く読めました。主題によって文体が大きく変化しており、それぞれ異なった雰囲気を楽しめます。
2010/09/17
さりー
昔読んだ著者の本が読みづらかったのでどうなることかと思ったが、この本はとても読みやすかった。今で言えば百合小説ということになるのだろうが、はしたなさは無くむしろ焦れったいような奥ゆかしい物語である。文章の端々から吉屋先生の茶目っ気が伝わってきて、思わず微笑んでしまう。時を経てもちっとも古臭さを感じさせない良書である。
2011/10/29
𝕲𝖊𝖓𝖊𝖘𝖎𝖘𖢲
文章に酔うとはこういう事でせうか。孤高なる美意識と名付けるも実態となれば乙女故の唯の捻くれ具合と自己陶酔具合と屁理屈具合に、もう心を射抜かれてしまった。章子先生の葛藤と演者ぶりにシンパシー。この作者や作品は同性愛要素云々よりは作者のブリブリな乙女全開説法に支持があるのだろうなと。故に勿論好き嫌いに激しく別れそうだけど、永遠乙女宣言の私は嫌いになる要素無し。吉屋信子という乙女のカリスマ、そんな御身の描き出す麗しくも切ない世界を想い泪さしぐみつつ、此れを記す。(なあんて)
2014/07/03
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