「悪」と戦う
「悪」と戦う / 感想・レビュー
えか
ひと言ひと言が、今、語らなきゃいけない何かを伝えようと一所懸命で、だから、読者も文意を読みとれないうちは、次の文章に移ってはいけない。そんな気持ちにさせてくれる本がある。タカハシさんの本は、そんな本だ。いや、本来、全ての本が、そんな本でなければいけないのだが、あいにくタカハシさんほど、言葉で凡ゆることを、伝えたい、と、望んでいる人は少ない。でも、おかしなことに、そんな愛おしい本、丁寧に読み進めなければならない本、残りページを見て、もうこれしかないんだ、と、ため息をつくような本ほど、読みおえるのもまた早い。
2024/02/28
白義
これはものすごく大切なことだけが描かれた小説で、感覚的にものすごくわかるし感じ入るんだけど、言葉、概念で整理をし、語るのが難しすぎる。一つ確実に言えば、他にあったかもしれない存在や可能性、世界から放置され、傷つき選ばれなかった可能性への責任を引き受けなければならないし事実人はそうしている、というのがキーなんだけど、それをどうやってやったか、というと本書を読んでください、以上に上手く言えない。舞城らしくもあるし、一つの「世界」は他の無数の「世界」に支えられているのはクラナド的な倫理のあり方でもある
2011/12/09
田氏
並行世界を旅するセカイ系ジュブナイルを、高橋源一郎が書くとこうなった、みたいな。舞城王太郎チックな匂いをところどころに感じつつも、やはり目立っているのは、大胆かつ繊細な(なんと使い古された形容だろう)ことばづかい。「さようなら、ギャングたち」の衝撃に比べると、だいぶ落ち着いた、あるいは洗練されたというのか、ではあるが。®や™な固有名詞をコラージュのように織りこむのも相変わらず。そして、そのような表層に覆われて、本質とかなんとかいうやつが見えづらいのも相変わらずだ。だからこのひとの文章をもっと読みたくなる。
2019/12/09
Bartleby
「一つの世界は他の世界によって支えられている」。ありえたかもしれない様々なことを抱えて今生きていて、その世界ではみあちゃんのようにあらゆる不条理を背負わされてしまう存在もいる。そういう存在に自分はどう関われるのか。うまく語れなくてもどかしい、けど何かことばをしぼりだしたくなる。そんな気持ちになるのは作者の思いやことばへの誠実さがあって、それが読む側に伝染するからかもしれない。
2012/01/02
izw
「幅書店の88冊」の紹介で手に取った。3歳のランちゃんが「世界」を救うためにパラレルワールドで「悪」と戦う、というと身も蓋もないが、設定もおもしろく一気に読んでしまいました。ひらかな・漢字の使い分け、紙面に対置される活字で構成された模様など、日本語だからの表現が駆使された紙面も楽しめます。帯に「高橋源一郎による、<世界文学>の誕生!」とあって、<世界文学>って何?と思っていたのですが、「世界」を舞台とした小説なのですね。デビュー作「さよなら、ギャングたち」も読んでみたい。
2015/06/06
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