わたしたちはまだ、その場所を知らない
わたしたちはまだ、その場所を知らない / 感想・レビュー
巨峰
凛とした名編だと思った。中学の国語教師坂口(女性)は、文学に興味を示す一年生の女生徒ヤマダミナコに惹かれるものを感じ、週に一度放課後ミナコに詩の個人授業をするのだが、、、そこからが百合的展開になるとおもいきや、潔癖なミナコは教師の抑圧的な行動からするっと逃がれ、それを許さない。そして、目立たない男子生徒だが詩作に意欲を示すニシムラとの関係に、息をつく。それぞれの立場で詩と言葉に向き合う教師と生徒。詩に対する考察も含め詩人小池昌代さんでなければ書き得ない小説だと思う。かつて文学少女文学少年だった大人に。。
2018/09/25
いくら
国語教師の坂口、その教え子で中1のミナコとニシムラ。3人を結びつけるのは詩。それぞれの心情が丁寧に描かれて、感情移入がしやすい。不安定な思春期の頃の感情を思い出し苦しくなる。また、そこに詩的な情景描写が折り込まれてくるところがたまりません。作者の言葉を借りるならば、「甘やかな」痛みを伴う読書体験ができました。なんでも胸キュンで括ってはいけないね。
2016/05/21
まど
詩に惹かれる女子中学生・ミナコと女性教師・坂口が交わした、不器用な愛と友情の物語。詩のこと以外はたくさんのことが書かれていないのに、一人一人のことが深くわかる。筆者の力なのか、『詩』の力なのか。不思議な読後感。一般生徒から隔離されている「芽吹き」が気になった。学校の中であそこまで秘密の場所があるのは不気味。
2010/08/30
つーさま
冴えない女子中学生ミナコ、男子中学生のニシムラ、国語教師坂口。本書は、詩を愛する彼らの交流を描いている。散文と散文、会話と会話の間から詩的な表現が植物のように顔を出し、甘い香りをさせながら全身を舐めまわす。しかし、恍惚とした感覚が去った後、皮膚という皮膚には傷がある。そこから痛みがやってくる。詩にも小説にも棘があることをすっかり忘れていた。詩を読むこと、小説を読むことは、常に甘美に浸りながら、痛みに耐えることなのかもしれない。もちろんその逆も言える。彼らのやりとりはそんな大切な感覚を教えてくれる。
2013/04/30
黒猫
途中で放棄しようと思ったがなんとか読み終える。葡萄棚の下の詩の朗読会。私も参加してみたかった。中学時代に。萩原朔太郎の詩、読んでみようと思った。
2017/05/04
感想・レビューをもっと見る