冥土めぐり
冥土めぐり / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2012年上半期芥川賞受賞作。鹿島田真希は初読。選評では、選考委員の全員がこの作品にマークを付けているが、◎はいない。小説は奇妙でいびつな家族を描く。1人称語りではないが、視点人物は一貫して奈津子に置かれている。したがって煩悶も、苦悩もすべて奈津子の感じる一方的なものだ。小説全体を重しのように支えているのが、脳に障害を負い、通常の感情を喪った夫の太一である点がもっとも特徴的だ。この夫婦と奈津子の母と弟といった「家族」の危うさ、というよりは崩壊しないのが不思議な関係性に新しい小説世界の可能性を見るのだろう。
2013/06/14
kaizen@名古屋de朝活読書会
芥川賞】なんかやけっぱちな文章。「冥土めぐり」文藝2012年春号「99の接吻」文芸2009年夏号。自分と他人の軸のずれ。誰にでもあるものだろう。文章にしても違和感がない。人間の距離の違いだろうか。著者と主人公と読者だけが近く、他の登場人物が遠い。遠い登場人物も著者が描写している。主題は家族だろうか。
2014/05/06
遥かなる想い
平成24年/2012年上半期 芥川賞受賞作品。 裕福だった過去の呪縛から 逃れることにできない 母と弟を 奈津子という女性の視点から 描く。 ある意味 心が壊れてしまった母と弟は不気味だが、 喪失を現実として受け止めることのできない現代人は多く その視点で見ると 冷静すぎる 奈津子もまた壊れているのかも しれない。 脳を患った 夫太一の描写は優しく、過去の高級ホテルを めぐる旅は 太一と奈津子の再生への旅なのかもしれない
2013/06/02
とら
芥川賞受賞作。確か前に『王様のブランチ』で、鹿島田さんがインタビューされてるのを見た気がする。表題「冥土めぐり」について”主人公が心が死んでしまったような状態から、生きる生命力をもらって帰ってくる、そこが冥土を巡って帰ってきたという意味です”覚えてるなあ。でも何より印象深いのが、太一のモデルが、実際の旦那さんだということ。何だかそれ一つ読む前に踏まえてるだけで、全然違うと思う。鹿島田さんは旦那さんに対してこう思ってるの?とか。「99の接吻」は結婚してるのに書いたの?(笑)とか。なにか生きる希望を貰った。
2013/03/21
おしゃべりメガネ
三島由紀夫賞受賞作家の鹿島田さん作品でしたが、さすが?三島由紀夫賞作家さんであり、芥川賞作品でした。正直、面白かったか?と問われると返事に困ってしまいます。そもそも、面白い、面白くないの定義?で区分されるレベルではなく、この作品、作家さんが持つ雰囲気を好み、受け入れることができるかというトコが大切なんでしょうね。2話からなる本作ですが、2話目は4姉妹のお話で、正直私には残念ながら、何が何だかサッパリわからぬ&伝わらない世界観でした。女性姉妹ならではの独特なモノの見方や考え方が、ディープに描かれていました。
2017/10/22
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