憤死
憤死 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
4つの短篇を収録。いずれも、いささか怖いお話だ。いくぶんオカルトっぽいところもあって、よしもとばななさんの作品が一時期そうした傾向にあったことを思うと、綿矢りささん、あなたもかと、ちょっと心配にならないでもない。もっとも、彼女にとっては、半ばは従来の手法でもあり、また半ばは新しい試みとも見え、小説の幅を広げ新しい領域に向かうのかとの期待感も持てるか。篇中では、表題作よりも私はむしろ「トイレの懺悔室」の方がが面白く読めたが、斬新さという点では「おとな」かとも思う。
2017/04/06
hiro
綿矢さんの本6冊目。短編4編の短編集。まず、題名の『憤死』がピンク色の文字で、さらに‘憤’と‘死’の文字に小さなハートマークまである表紙に驚く。続いて、今まで読んだ綿矢作品の主人公はすべて女性だったので、男性主人公に驚く。そして、作品が綿矢さん自身が好きという「トワイライトゾーン」を思わせる怖い話で、今までの作風との違いにみたび驚いた。これまで、綿矢さんの守備範囲はあまり広くなかったと思うが、恋愛や女性間の話だけでなく、これからは男性主人公も含めて、いろいろな作品に挑戦し、新しい綿矢りさをみせてほしい。
2013/09/08
kera1019
澱が沈むように静かにグラデーションしていく展開に引き込まれて、今まで話をしていた人がクルッと振り向いた瞬間、全く違う顔を見せるのにはドキッとさせられますが、一人称で語られる物語が登場人物の話を直接聞いてるみたいでした。コウキの付き合いの長い、よく俺のことを知ってる人間にこそ相談でいないという言葉が妙に心に残りました。
2014/09/06
みゃーこ
「トイレの懺悔室」は不気味だった。人間の心理構造を暴くサブカル程度の心理学…という表現がまた良くて、この薄気味悪さ人間の業の扱い方がすごい面白かった。「憤死」の佳穂のイタさ加減、私も好きだ。これぐらいの勢いとわかり易さと潔さで生きている人を面白いと感じたりイヤな奴だと感じたり振り回されて見たりする主人公。でも佳穂のことが結局好きだという気持ちもわかる。「人生ゲーム」はなんとなく「世にも奇妙な物語」の世界だった一番最後の一文に凝縮された無常感はさすがだった。
2013/07/03
風眠
「押し入れでエロサイトのサクラ」やったり、「浮気相手の前で暴走」したり、「彼氏の背中蹴ったり」する綿矢女史の爆発っぷりも好きだけど、こういう淡々とした綿矢女史もいいなと思う。「いい大人はいつも笑顔を浮かべてる」という締めがホラー並みに怖い『おとな』から始まり、『トイレの懺悔室』、『憤死』、『人生ゲーム』と、ありそうでありえない物語が続く。特に表題作『憤死』は、自分大好きかまってちゃんと、それを冷静に観察する主人公と、ふたりの歪んだ心理描写が圧巻。表紙の可愛いらしい雰囲気とのギャップに驚く、真っ黒な短篇集。
2013/04/25
感想・レビューをもっと見る