ワールズ・エンド・ガーデン: いとうせいこうレトロスペクティブ
ワールズ・エンド・ガーデン: いとうせいこうレトロスペクティブ / 感想・レビュー
sk4
非常に良くできた小説だと思う。 物語の脊髄とも言うべき存在は【解体屋】と呼ばれる登場人物。似非宗教や自己啓発プログラムなどによって洗脳された人の心を解体するスキルを生業とする男。 砂漠(デゼール)という虚構の街にフラリとやって来た記憶の無い男は、その予言めいた語り部で砂漠(デゼール)の住民を魅了して体制を脅かす。しかしその男はそういうつもりでこの街にやって来たのではないのだ。 男の持つ闇。それは主人公の恭一から恭一の知る恭一自身を破壊し、広大な闇に引きずり込む。 【破壊】と【再生】、そして。
2014/03/21
ぐうぐう
まるで今日書かれた小説のようだ。いとうせいこうの『ワールズ・エンド・ガーデン』は、1991年1月に刊行されている。これが、26年も前に書かれていたとは、到底信じられない。1991年と言えば、オウム真理教の事件も、ふたつの大きな震災も、9.11もISによるテロも、まだ起こってはいないというのに、それらをモチーフに描かれたかのような物語なのだ。湾岸戦争勃発とほぼ時を同じにして刊行された本作に登場するコーランが鳴り響く都市は、その時点ですでに予見的ではあるが、(つづく)
2017/02/23
なつ
戦争、宗教、自分の価値。混ざり合っていて、ちょっと迷子になりつつ、読了。戦争も怖いけど、宗教も捉え方によっては恐怖。若さも時として凶器になるのかも、、と思ったり。不思議な余韻に包まれた1冊でした。
2015/04/03
kenpah
カルト宗教、ドラッグ、洗脳などなど、いろんな要素が互いにぶつかり合ってるサイバーパンクな凄い物語でした。しかも、1991年に書かれてるそうで、びっくりです。始まりはワクワクしましたが、言葉のセンスが良すぎて後半ついていけず…6点
2018/07/15
忘備録
「言葉の解釈」と「自己のルーツ」について考えさせる小説だった。どうとでも取れる抽象度の高い言葉を、信者達が現実世界に当てはめて解釈する。その恣意性を顕にするように、信者の中でも対立が起こる。ある人物の主観的解釈の中で、言葉が現実に溶け出す瞬間はゾッとするものがある。また、「お前は誰だ」という問いにより男は胸中の闇を引き出される。「はじまり」が定かではないことへの危惧から、子でありそして父でもあろうとする。だが、「始まりも終わりも定かでないのなら、と思いかける。それは両方ともありはしないのだ。」
2020/05/16
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