英子の森
英子の森 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
中篇と短篇5つを収録。表題作は隠喩というには、あまりにもあからさまな「森」。主人公の名の英子もまた同様。そしてその一方で英子の母親は作者から高崎夫人と呼ばれている。英子との断絶の表現かとも思うが、だとすればこれまたいたってわかりやすい。そう、この小説は徹頭徹尾わかりやすいのだ。あまりにも。あるいはそこにこそ作者が密かに用意していた陥穽があるのだろうか。いずれにしても。この森に出口はないだろう。短篇はいずれも、松田青子さんにとって実験的な手法を試みたもの。新たな小説作法の模索の現れであると思われる。
2017/10/06
❁かな❁
松田青子さんの『スタッキング可能』を以前読んでシュールで個性的でインパクトあって楽しめたのでこちらの作品も読んでみました!6編の短編集。前作で松田青子さんの世界観に慣れていた為か前作程の衝撃はありませんでしたが、とても面白かったです!爆笑するような面白さではなく着眼点が個性的で不思議で、だけどとてもリアルでもあり楽しむ事ができました♪「英子の森」「おにいさんがこわい」「スカートの上のABC」「わたしはお医者さま?」が特に良かったです☆「おにいさんがこわい」は面白かったです!青子さんの次回作も楽しみです♡
2014/10/15
fwhd8325
あまり感じたことのない感覚でした。突飛ともシュールとも違う、全く新しい感覚。ちょっと戸惑いもあるけれど、これが後を引きそうで怖い。翻訳でなくて小説は、これが初めてなので、もう少し作品に触れてみようと思います。
2018/02/17
なゆ
『スタッキング可能』の時も思ったが、どこか手ごわい。さらさらと読めそうでそうはいかなくて、あちこちで引っかかりが。でもなんか面白くて、そして深い。表題作では〝英語を生かした仕事〟というものへの思い込みにハッとさせられ、「博士と助手」読んだら〝松田青子節が炸裂!〟とはもう書けないな(笑)。短いながらもガツンと残る「*写真はイメージです」では、イメージのゲシュタルト崩壊が。そしてブラックホールに吸い込まれるような気分。「わたしはお医者さま?」では、ゲームの会話の内容も面白いが、置かれてる状況がやけに気になる。
2016/01/02
風眠
シニカルだけれどコミカルで、どこか人を喰ったような強気さでガンガン攻め込んでくる松田青子の書くものが大好きだ。人が持つアイデンティティとか思考とか、目には見えないけれど確かにあって、その人を確立するためには欠かせない大切なもの。そういうものを松田青子が文字に起こして可視化すると、こんな物語たちが生まれるのだろう。悪ふざけのようでいて実は本音100%みたいな、登場人物の心のぼやきという形を借りて、見えない大切なことに気付かせてくれるのが、たぶん松田青子という作家なのだ。『*写真はイメージです』には爆笑した。
2014/12/23
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