浮遊
浮遊 / 感想・レビュー
いつでも母さん
『思考が髄液の中に浮かんでいる。浮遊する思考』『魂は思考。思考は脳細胞の働き。思考こそがヒトなのです。』苦しい作品だった。研究以外の何物でもない。が、研究から今の医学が在る。しかし、いざ自分が臓器提供カードを提示していても、この研究をしていた医者だからと脳は傷ついていないからとこうして『生かされる』のはどうだろう・・心停止が死か脳死が死か!またここにたどり着く。この状態で恋人と意思の疎通が出来るのは小説ならでは。同じラボの人間たちからの自分への思いを知ることになるのは苦痛だっただろう。未来はそこなのか!
2016/04/11
*すずらん*
ユラユラと浮遊していた私は、やっと水面の上に顔を出すことができました。閉ざされた空間で只一人この本と向き合うことは、非常に苦しく恐ろしいものでした。無限の時間と孤独が横たわる中で、永遠と生と死の定義を問われ続ける。しかし私は考えた末の思いを伝える手段を持たない。これ程圧倒的な絶望があるでしょうか?いっそのこと思考を止めてしまいたい!だけども脳が活動を続けられる内は、それすらも赦されないのです。この状況のどこに希望があるでしょう?追い詰められた私はもがきながらも浮上し、今やっと新鮮な空気を吸ったところです
2016/04/02
Rin
【図書館】脳のみの存在は生きていると言えるのか。人は脳で考えるし、性格や感情は脳からくるもの。心臓と脳、この問題は考えれば考えるほどにわからないし、答えも出せない気がする。脳の移植をしたとき、その身体を司る性格はどうなるのか記憶は?と少し怖い気持ちも抱きながらの読書だった。ただ、個人的にもう少し短くまとめてもいいのかな、とは感じた。それでも脳だけになり、真っ暗な世界で思考のみを続けるという苦しみと絶望に、医学の進歩に対して恐ろしさも感じた一冊。死とは何か、命と医療の関係の複雑さを見ることができました。
2016/10/02
Yunemo
著者の新境地として理解して。いろんな場面で無理を感じたり。医学の奇跡と罪を問う、確かに、人とは何か、生命とは、との倫理観から論じられない事象でしょう。まず思い起こすのは孤独感、こんな状況耐えられません。「闇」と「時」そして「無」、ここから派生する狂気と正気の狭間、もしかして、これらを具現化すると「引き籠り」の実態となるのかも。現実的に言えばちょっと飛躍し過ぎな自身の想い。全体像を築くためか、無理にミステリーじみた部分とか、必要性を感じられないところもあって。なかなか自身の中で嵌らない作品、読了直後の想い。
2016/04/02
ASnowyHeron
この作品のような研究がどこかで本当にされていそうで怖い。主人公の前で本音を話す人々に主人公が「無意識に人を傷つけていた」と悟るのだが、過去のことをたまに思い出しては自己嫌悪に陥っている自分自身を思い浮かべてしまう。そして初めてALSの話を聞いた時の恐怖を思い出した。人が”生きている”とはどういうことなんだろうか。
2016/05/30
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