ねこのおうち
ねこのおうち / 感想・レビュー
ヴェネツィア
4つの連作短篇から成る作品集。タイトル通りに全ての作品に猫が登場するが、猫はあくまでも物語の素材として機能するのであって、基本的には飼い主の人たちの物語。ひかり町のひかり公園と物語の場はいたって狭く、動物病院の港先生が構造上の核となっている。物語世界の全体は暖かいようでもあるが、なんだかせつない感覚もつきまとう。生きていくことの悲しみのようなものが揺影するのである。猫にとっての「おうち」もそうだが、そこに暮らす人間にとってもそれは手放しで幸福とは呼べないからだろうか。
2021/02/06
starbro
柳美里は新作中心に読んでいる作家です。2年ぶりの新作、著者の毒・狂気が良い意味で抜けた感じで何時もの作風と異なりました。著者は現在、震災後の南相馬市に猫と暮らしているので、大分心境の変化があったのでしょうか?問題のある家庭に寄り添う猫の癒しが温かい気持ちを齎します。連作短編集ですが、中では「ニーコのおうち」がオススメです。表紙と挿絵の千海博美の猫のイラストも良い味が出ています。
2016/07/03
風眠
学生時代、演劇好きの友人が柳美里を絶賛していて戯曲を何冊か貸してくれた。なかなかに尖っているな、と思った。その尖った先端は、作者自身に向けられているように感じた。その後、何冊か小説も読んだが印象は変わらなかった。『ねこのおうち』という可愛らしいタイトル、心温まるような切なさ満載の物語。これは柳美里?と思った。けれど人物描写の中に見え隠れする容赦のなさは、うん、やっぱり柳美里。自分を通してしか見られなかった命。別の命を通して見ることができるようになったのだとすれば、彼女のこれからの作品をとても楽しみに思う。
2016/08/09
chimako
小さな町の公園。そこに集まる野良猫たち。1匹のキジトラ ニーコが産んだ6匹の子猫をめぐる連作集。厳しいことも、辛いことも、悲しいことも、切ないことも 当たり前にある。別れや混乱や意地悪や身勝手もある。そんな中で一匹の猫に慰めれ、勇気づけられる人たち。優しくなり穏やかになった人たち。動物は嫌いな人もいるし、アレルギーのある人もいるし。自分の気持ちを押し付けず上手く共存したいものだ。
2017/11/30
ゆみねこ
ひかり公園に捨てられた一匹の子猫。おばあさんに保護され「ニーコ」と名付けられた猫から始まる連作。人間の身勝手で捨てられる猫たち、保護する人、毒団子を撒く人。遠い町に引っ越した原田くんのその後が幸せだといいな。すべての猫が幸せに暮らせたらいいのに。。
2017/04/21
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