選んだ孤独はよい孤独
選んだ孤独はよい孤独 / 感想・レビュー
ケンイチミズバ
どの話にもリアルに実在する誰かがいるなと思った。失業中、母親のパート代でボウリング。結婚し子供もいる同級生とレーンが隣合う気まずさ。ずっと地元にいるから誘われ、どこかに必ず顔見知りがいる。ムロツヨシさんを彷彿させる、あの時逃がしてくれた先輩がいたから今の俳優としての成功がありますの編がなかなかいい。くたびれたサラリーマン、後輩のため口も気にしない、会社での自分は演技さと教える。タバコの吸い方がカッコいい。むしろ先輩の方が役者になれたかも。こんな会社にいたらもったいないよと思う人って結構現実でも出会うな。
2018/11/08
モルク
女流作家が描く男の生きにくさの短編とショートショート。軽快な文章で読みやすく短時間で読破できる。いけてない男性たちが主人公で、確かにあるあると思い当たる。逃げろ!おれが逃がしてやるという話と人型写真ロボットの話がよかった。でも、一番のお気に入りは、ショートショートの「いつか言うためにとってある言葉」である。夫が妻に対しいつかは言ってやると思っているがそれを言っては…思わずクスッと笑ってしまった。
2019/08/03
nico🐬波待ち中
なんて情けない男達。なんて不器用な男達。これが現代の男達のリアルな姿なのか。同棲していた彼女が荷物をまとめて出ていこうとする理由が全く分からない彼。仕事ができる風を装っているだけで実は役立つの彼。何をやっても儘ならない男達に、こんな男いるなと初めは苦笑いしていた私だったけれど、そんな男達の悲哀に満ちた現実、プレッシャー、ストレスに同情してしまう。確かに女の方が一枚上手で、強かで逃げ足も速い上に巧い。「おれが逃がしてやる」と後輩の優柔不断男に言い放った館林さんは、この短編集の中で唯一カッコいい男だった。
2018/10/06
ででんでん
短編、断片集。なかでは「おれが逃がしてやる」「あるカップルの別れの理由」「ぼくは仕事ができない」「ファーザー」…がよかった。また「心が動いた瞬間、シャッターを切る」の一家とニコンが素敵。そして最後の「眠る前の、ひそかな習慣」で、死の床にある彼が『これまで少しでも関わったことのある人は全員、友達に思えた。同じ時代に生まれ、この広い地球の中で、偶然にも近くにいた人たちを、知り合いなんて冷たい言葉で表したくなかった。…どうせまた会えると思いながら、二度と会えなかった大勢の人たち』というところがひたひたと沁みた。
2018/07/23
yuyu
まるで玉手箱のような短編集。数行しかないものから、キッチリとした作品が散りばめられている。テーマは、もがく男たちの「孤独」。孤独といっても、暗いものはほとんどなく、サラサラと流れていくような軽いものがほとんど。男の孤独と女の孤独はそこが違うのかも。同郷の作家さんのせいか、親近感がわく。「さよなら国立競技場」は、あの高校の出来事が題材かなぁ。
2018/10/24
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