不意撃ち
不意撃ち / 感想・レビュー
ケンイチミズバ
運ぶ男、運ばれる女。女は商品。客は頭部と腹部に銃弾を受け既にこと切れてる。床とドアノブをウエットティッシュで拭い、スマホを探し持ち帰る。冷静に対応できたが声は震えてた。お互い名前も知らない。風俗嬢をホテルまで運ぶドライバーと売れっ子の女はここから互いの仲を深める。大金を手にするまであと少しの辛抱の人生が別の展開へと。サラリーマンにも思いがけない人生の展開はある。「うちと不倫してくれへん」と言われ動揺し、今度映画でもとお茶を濁した。震災で3年足らずで本社に戻されたし不正も目にした。みんな不意打ちだったな。
2018/12/18
KAZOO
久しぶりに辻原さんの作品を堪能しました。表題の作品があると思いましたが、5つの短編にすべてに不意撃ちのような場面が出てくるということで納得しました。作者夫妻のような人物が中学時代の恩師を訪ねる話が結構最後に驚かせてくれます。私は最後の話が一番好きです。私も一人で生活してみたいと思う時がありますので。
2019/11/09
クリママ
不意撃ちのような形で終わる5年の短編集。実際に起こったの事件も絡んだノンフィクションを思わせる乾いた硬い文章。被害者は不本意な人生を終え、加害者は幸せな悠々自適な人生を送っている。「この世界がこのような不条理から出来上がっている…」そのような思いが作品を貫いているようだ。しかし、後半2編のあまりの雰囲気の違いに驚く。「月も隈なきは」定年後の男性の1日、そして数か月を丹念に描き、淡々とした可笑しみが感じれる。どちら作風が辻原氏本来のものなのだろうか。他の作品も読みたいと思った。
2019/11/25
りつこ
面白かった!五編収められているがテイストが違っていてそれが楽しい。一作目の「渡鹿野」は妙にリアルで妙に作り話っぽいのが恐ろしいような。「いかなる因果にて」が作者の横顔が見えるようで結構好き。不条理を見て憤りを感じたのではない。それを原稿に書いて生活のたつきとするのが私の商売、というカラッとした文章が好き。一番好きなのは「月も隈なきは」。これ、いいなぁ。辻原さんの作品、どんどん読みたい。
2019/05/17
kawa
「冬の旅」や「籠の鸚鵡」が印象的だった辻原 登氏。本作は様々な「不意撃ち」現象が、ドラマの結節点や終末点になって意外な展開に発展する短篇集。登場する渡鹿野、新宮、相模大野、赤羽等、土地勘があったり、行ったことがあったりでロード・ム-ビー的要素も含めて楽しめた。大災害に乗じて詐欺的犯罪を試みる「仮面」、今の環境が私と似ている主人公がちょっとした冒険を試みる「月も隅なきは」が特にお好み。来年、秘かにではなく公に「一人暮らし」を計画している。
2019/12/09
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