沈黙の作法
沈黙の作法 / 感想・レビュー
アキ
宗教学者・山折哲雄と作家・柳美里の6夜にわたる対話。第一夜から第四夜までは2013年から翌年にかけて各季節毎、東日本大震災や日本人の宗教感、死に関することなど話し、一気に4年以上経ち第五・六夜は連夜の対談。この最後の二夜で、身近な人の死を哀しむ人の悩みを聞く時に必要なことを、山折氏が「沈黙の作法」と発し、柳氏が「作法にあるのは美」と返すやり取りがいい。また「闇は光では照らし出せません。闇を闇で照らすことが宗教や文学の役目なんじゃないのでしょうか」深い言葉のように感じました。沈黙もまたひとつの言葉なのです。
2021/02/15
ネギっ子gen
【死を間近に見ることから、生を考え直す。/死を忌避するのではなく、人生の中に明確に位置付ける。(『柳美里の「自殺」』)】生と死、独り、そして沈黙。人は言葉ではなく沈黙により結ばれる。宗教学者と小説家が6夜語り尽くした魂の記録。推薦。2019年刊。近年、「葬送」から「告別」に変更されたことについて、山折は、<「葬送」というのは、死者の魂を送ることですよね。どこに送るかというと、浄土や天国や天にです。「葬送」から「告別」への変化は、現代人が魂の存在を信じられなくなってしまった表れなのではないでしょうか>と。⇒
2024/07/22
yamahiko
私は最も身近な人と濃厚な沈黙の時間を共有できたのだろうか。言葉を失った父を看護する合間に頁をゆっくりと繰りました。
2019/09/21
スリカータ
宗教学者の山折さんは知らなかったけど、とても博学で90年近く生きていらっしゃる経験値とストレートで鋭い物言いが面白くて、6夜に亘る対談も飽きずに一気読み。柳美里さんに対するある種の決めつけは、人によっては失礼だと怒るかもしれないけど、さすが柳美里さんは受け入れて咀嚼する。会話中に沈黙が訪れるけど、回避せずにそこから自然に接ぎ穂が生じるのを待つスタンスは、こなれた者同士だからかな?私だったら沈黙回避で余計な事を喋って後から自己嫌悪に陥るパターンなので、羨ましい。
2019/11/08
新父帰る
2019年6月刊。知人の勧め本。柳さんの本は初めて読んだ。宗教学者の山折さんと柳さんと対談本だが、6年位跨って行った対談を一冊にまとめたという感じだ。柳さんは東日本大震災に深く関わって来たことを初めてこの本で知った。その行動力は凄まじいものがある。柳さんが死の問題に直接挑んでいるところが山折さんと向き合えるのかなあ~と思った。沈黙にも作法があるのかと奇異に感じながら、読み進めた。最後に山折さんは親鸞に傾倒していて、また、東日本大震災から大伴家持の和歌「海ゆかば」を連想しているところがとてもよかったと思う。
2023/02/12
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