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改良

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作家
遠野遥
出版社
河出書房新社
発売日
2019-11-14
ISBN
9784309028460
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「改良」のおすすめレビュー

趣味は女装、稼いだバイト代はデリヘルに。「私」でありたいともがく男子大学生が遭遇したのは…

『改良』(遠野遥/河出書房新社) 女の腹には、卵子のもととなる原始卵胞というものが存在する。女は、一生ぶんの原始卵胞を、胎児のうちから腹に抱えているという。つまり多くの女は、子を生みたいかそうでないかという当人の意思とは関係なく、生まれる前から「生むための細胞」を持っている。わたしの生は、わたしが生まれもしないうちから、「なにか」にレールを敷かれているのだ。 『改良』(遠野遥/河出書房新社)という作品の主人公・「私」に親しみを覚えるのは、そんな思いを抱いたことがあるからかもしれない。 「私」は、コールセンターでアルバイトをする大学生。アルバイトと週3回の大学の講義を除けば、予定と呼べるものもない。だが「私」には、密かに追求しているものがあった。メイクや衣服のコーディネイト、女性らしい仕草の研究──そしてアルバイトで稼いだ金は、美容とデリバリーヘルスに消えていった。 “私は、初めてメイクをしたときのことを思った。全然思い通りにならなかったけれど、私は一生懸命だった。誰かに助言を求めるわけにはいかなかったから(中略)、記事を読んだり動画を見たりして知識を仕入…

2020/3/8

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改良 / 感想・レビュー

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starbro

第56回文藝賞受賞作ということで読みました。LGBT+女装男子、ジェンダー性の多様性と今時の大学生の心の揺らめきを衝撃的に表現したということでしょうか? 次回作は更に改良されますでしょうか?(笑)【読メエロ部】

2019/12/25

遥かなる想い

第56回文芸賞。 コールセンターのバイトをしながら、美容に精を出す男の物語である。ひどく 共感できない 投げやりな日々を 冷めた視線で描く。 それにしても 読んでいて 感じる 後味の悪さは何なのだろうか? 気色の悪い若者の自分勝手な内面を 読まされた…そんな作品だった。

2020/09/13

いっち

大学生の主人公は女装をする。ウィッグを買い直したり、メイクを研究したりとストイック。だが、男を好きなわけではない。美しくなりたいだけ。女装が好き=男好きだと勝手に解釈していた。冒頭の、主人公が小学生時代に男の子から性的な強要をされたことが、男好きにつながったのだろうと思い込んでいた。そう思い込むことで自分なりの物語を作って安心したかったのかもしれない。そんな思い込みは良くないと思った。勝手な解釈は恐ろしいと。主人公の、意識の流れのような、凶器めいた語りをいつまでも聞いていたかった。次の作品を早く読みたい。

2019/11/28

てち

破局を読んでおもしろかったので本作も読んでみた。主人公は美しさを求め、自分自身の改良に勤しむ。LGBTQ に関して書きたかったのではなく、一人の人間を描きたかったのだと私は感じた。文体は軽く無機質にも感じるが、決して主人公の人間味がないわけではない。これは、在り来りの現代小説ではない。

2020/11/08

ケンイチミズバ

性同一性障害なのか、第三者に認められたい強い欲求を持つ変態なのか。独特の脳内世界と文才に打ちのめされた。体に感じる違和感、美しさへの憧れ、しかし男性のシンボルが反応する混乱。矛盾が続くメンタルの納得と拒絶の繰り返し。そうして形成された人格はなるほどこうなる。酷いことをされている最中も脳は暴力を許容したり拒絶したりの思考なので読んでいてかき乱された。折れた鼻の心配よりその血でニットが汚れることを気にする思考の不可思議はヒトという生き物の行動の理由付けや納得さえあれば克服してしまう一種の生きる術なのだろうか。

2022/01/18

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