ババヤガの夜
ババヤガの夜 / 感想・レビュー
こーた
文藝の特集で読む。ヤクザと暴力。殴る。嬲る。痛い。その痛みが読むと痛快にかわる。何か怖そうだなあ、と慄いて読まずにいたのが勿体ないくらいだ。恋でもなければ、友情ともちがう。うまいことばがあてはまらない。でもシスターフッドってそういうものなのかもしれない。まだ名前のない関係性を描く。それを表現するのに小説という手法は最適だ。闘う主人公は『ミレニアム』のリスベットを彷彿させ恰好いい。おまけに飛びっきりの騙される快感までついてくる。ミステリとしても極上。彼女たちの人生、もっともっとながい長篇でも読んでみたい。
2021/03/10
青乃108号
過剰な暴力性を秘めて生きてきた「ババヤガの女」。ババヤガ=鬼婆。女はひょんな事でヤクザに拾われ組長の一人娘の通学や習い事通いの運転手兼、ボディーガードを仰せつかる。最初は険悪だった娘との関係性も徐々に良くなってきた頃。組内で信じられない事が起こりババヤガは娘を連れて逃げる。当然追われ、逃亡生活を続ける2人。そして物語はクライマックスを迎え、ババヤガは逃亡生活で封印して来た暴力性を一気に解放させ暴れまくる!ババヤガと娘の運命は。ラストシーンは映画「真夜中のカーボーイ」のそれを想起させ、切なさが胸に迫る。
2024/02/02
パトラッシュ
暴力アクション小説は数あれど、女性主人公なのは初めて。しかもキャラ全員が狂気と衝動に身を委ねており、冷静沈着に行動する者は皆無という振り切れぶり。「なぜ」と思えてしまう暴走にも一切の説明や描写はなく、その場の感情の連鎖が無意味な死を量産していくのだから。男たちが繰り返す血まみれの世界にあって、ヒロイン依子と尚子が少しずつ心をつなぎ合わせていく過程が純愛のように美しい。途中で挟まれる逃亡男女のエピソードに重大な仕掛けがあり、肉体がぶつかる喧嘩の果てに2人のシスターフッドへと結実するラストは本当に美しかった。
2023/07/15
ひさか
文藝2020年秋季号掲載のものを2020年10月河出書房新社から刊行。魅力的な登場人物たちと良くできた世界観と卓越したストーリー構成の傑作。ぶっ飛ぶほどのインパクトがあり、どんでん返し的な展開も用意されていて、ハッピーエンドではないものの読後感は爽快。堪能しました。本年度ベスト級の作品です。
2021/06/29
tetsubun1000mg
定期購読の「本の雑誌」の書評で評価が高かったので選ぶ。 初読みの作家だと思うが冒頭から凄い格闘シーンが続き、しかも主人公が女性で柔術?の格闘家の設定であるがヤクザの組長の家に拉致される。 そこで娘のボディーガードをさせられるのだが、そのあとのことも驚くことばかり。 疾走感があるので読み始めると止まらず最後まで一気に読んで夜更かししてしまう。 ヤクザが絡んだハードアクションを映画館で見たような印象。 終盤で筆者にいいようにはめられたことに気が付くが面白さが一層増してくる。 こんな本を書く筆者はどんな人?
2021/01/26
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