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世阿弥最後の花

世阿弥最後の花

世阿弥最後の花

作家
藤沢周
出版社
河出書房新社
発売日
2021-06-18
ISBN
9784309029689
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世阿弥最後の花 / 感想・レビュー

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ちゃちゃ

人間世阿弥、最晩年の境地を描く。能を大成させた世阿弥は72歳で佐渡への遠島を申し渡される。足利義教の勘気を被り咎なくしての流刑。失意の底にありながらも、佐渡の自然や島人との交流で得た穏やかな日々。老躯に鞭打ち、己を捨て森羅万象との融合を目指し至高の舞いを奉納する。そこには父として向き合えなかった亡き息男元雅への痛切な自責の念が重なる。「まことの花」を極めるため、幽玄の美を最期まで追求し続けた世阿弥。その人間的な苦悩や最後に到達した無心の境地が、数々の名歌や能の詞章を引用しつつ実に情感豊かに描かれた秀作だ。

2021/08/20

のぶ

世阿弥が佐渡に流罪となり、罪を許され都に帰るまでの、現地での生活を綴った作品。世阿弥については、能楽の祖として活躍していた事しか知識に無く、興味深く読む事ができた。物語は世阿弥が能登から舟で佐渡に向かうところから始まる。この時すでに72歳。そこで自然、環境、人びとの出会いにより、佐渡でも世阿弥独特の文化を築き上げていき、最後の花を咲かせていく。世は室町。年老いて慣れぬ土地での生活や気持ちがいかがなものであったかは文章からしか知る由もないが、藤沢さんの格調高い文章で、人間、世阿弥を見事に描いていた。

2021/08/25

しゃが

読み応えがあった。72歳の世阿弥が佐渡へ流罪となった。その地で自然、環境、人びとの出会いにより、円熟の世界に達する…。そこには同じように流された人への思い、亡くした息子への思い、都での能への姿勢…の回顧と新な境地が交錯する…。有名な和歌の挿入で心象や風景が描き進められ、分かりやすい、能の世界も。たつ丸という子ども、弟子たちや周りの人たちのキャラクターもいい。あの芥川賞受賞作品以来だったが、その意外性は最後でわかった。

2021/07/21

たま

この著者初読み。流罪となった世阿弥の佐渡への道行ではじまり、謡曲の詞章と和歌を織り込んだ道中風景が実に美しい。世阿弥は佐渡の人々と風物を愛し、恨みのうちに佐渡で果てた人々、とくに順徳院の霊を鎮めようと、能『黒木』(藤沢さんの創作?)を演じる。この能は佐渡の夜の海と亡き帝の荒ぶる魂の対照が印象的。断章ごとに変わる複数の語り手(亡霊も含む)が、目に映る情景を感慨込めて語る語りも面白かった。軍記、謡曲、浄瑠璃から浪曲へと続く語り物の伝統に立ち、そのまま劇画やアニメの世界に通じる日本文化の血脈を感じた。

2021/09/01

風に吹かれて

足利義教の勘気に触れ佐渡ヶ島への流刑の身となった世阿弥。島の人々との温かい交流の中、晩年の世阿弥は能を舞う。物語のほとんどは世阿弥の語り。世阿弥であれば、考えたであろうこと、思ったであろうことが丁寧な言の葉で語られる。能や美に生きることの意味、そして、若くして亡くなった息子元雅への切ない思い、佐渡ヶ島で亡くなった後鳥羽天皇の子順徳院(承久の乱のとき流刑)への憐れなどが世阿弥を浮きぼる。引用される西行などの様々な和歌がその場の人びとの心情を鮮やかに表現する。 →

2022/06/24

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