遠慮深いうたた寝
遠慮深いうたた寝 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
小説世界の構築においては、神秘的と評してもいいような小川洋子さんなのだが、こと日常生活ということになると、なんだかちょっとオマヌケなおばさんみたいである。本書の前半は、神戸新聞への連載エッセイなのだが、そんな等身大の彼女の姿を垣間見ることができる。編み物をしながら、阪神タイガースのチャンスが巡ってくると、密かに念を送るそうなのだが、そのくせ優勝を見ることができるのは、生涯に一度あるかないか、などと本音を漏らしてしまう。お連れ合いも何年経っても飽きることはなさそうだ。
2023/10/29
starbro
小川 洋子は、新作中心に読んでいる作家です。久しぶり約15年分のエッセイ集、タイトルも九谷焼による陶板画の装丁も素敵です。しかし著者が阪神タイガースファンで、甲子園で六甲おろしを唄っているとは思いませんでした(笑)著者の野望は、甲子園での始球式です🐯 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309030036/
2021/12/09
けんとまん1007
「遠慮深いうたた寝」というタイトルに籠められた想いが、最後にあって納得。小川洋子さん、小説もいくつか読んでいるし、エッセイもそうだ。一種独特の世界を感じるのだが、改めて、いろいろ感じた。一つ一つを大切にしながら、いろいろな経験・知見を、ご自分の中で醸成されてくるのを、慌てずに待つ。それから、丁寧に組み立てる姿勢。とかく、スピードだけを優先しがちな今だらこそ、そんな姿勢に見習いたいものだ。
2022/01/28
fwhd8325
この美しい表紙、まるで陶器のようです。そっと表紙を開いてみると小川さんの日常が綴られています。そこには、エッセイでありながらドラマを感じさせてくれる楽しい世界があります。小説の世界とは違う魅力にあふれています。「ベニスに死す」は小説は読んでいませんが、映画は何度も見ました。 わずか2ページの書評ですが、この物語の世界観が凝縮されているように感じました。
2022/07/05
アン
さりげない日常の出来事や想い出、本を巡る何処か懐かしい気分に浸る短編小説のようなエッセイ集。一緒にお散歩してるようでクスッと笑ったり、ご家族や少年少女への愛情ある眼差しに心温まり、謙虚で淑やかなお人柄が行間から滲み出て味わい深くて。記憶や喪失を通して受けいれる想い、ささやかな喜びの尊さ。世の片隅をさ迷う小さきものに目を凝らし、声なき声に耳を澄ませ慈しむ姿に惹かれ、私は閉ざされた扉をひっそり開くのだと。豊かな想像力で繊細に紡がれる幻想的で静謐な物語は、心の灯となり私をそっと見守り続けてくれることでしょう。
2022/03/08
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