くるまの娘
くるまの娘 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
家族小説のスタイルをとる。もっとも、いわゆる健全なそれではなく、かなり危うく崩壊の予兆を随所に秘めている。とりわけ、脳梗塞の後遺症を抱える母は常に起爆剤と成りうる存在であるし、兄も弟も既に家を出ている。そんな家族であるが、父方の祖母の葬儀が、父親を含めて彼らを再び集合させる。父親と母親とはそれぞれに(全く別個に)、失われた家族の再生を願っている。かんこ(主人公)を含め、子どもたちは、もうとっくに家族としての紐帯を諦めているように見える。かんこの日常は戻ったかにも見えるが、彼女の生活空間はずっと車の中。⇒
2023/03/03
starbro
宇佐見 りん、3作目です。ドライブ ファミリー カー、車の中の家族の群像劇、これはこれで好いですが、前二作に比べるとインパクトに欠けます。 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309030357/
2022/05/28
さてさて
『この車に乗って、どこまでも駆け抜けていきたかった』という主人公の かんこ。そんな かんこは壊れかけている『家族』の中にそれでも留まるという決意と共に毎日を過ごしていました。そんな かんこたち『家族』が、苦しみ、もがきながらも一歩前に踏み出す未来を感じさせるこの作品。『家族』のそれぞれの想いをリアルに描き出していくこの作品。極めて読みやすい文章の中に、物語の場面が目の前にふっと浮かび上がるような印象的な描写の数々と共に、『家族』をテーマにした小説群の中に新たな名作が誕生したのを感じた素晴らしい作品でした。
2022/05/14
いっち
著者の作品が、同じような主人公(女子学生)、病気(発達、精神障害)、物語(家族崩壊)で、最初は「またこれか」と思った。読み終わったとき、少し違った。母は精神的におかしく、父は怒鳴りつける。兄は家を出て結婚し、弟は祖父母の家に住む。周りの大人は逃げろと言う。主人公も今の環境を「どうしようもない地獄」と、良いと思ってない。だが家を出ない。逃げたくても逃げられないということではない。背負って、地獄を抜け出したかったと言う。共感はできないが、劣悪な家庭環境から逃げたいわけではない感覚を言語化している点が良かった。
2022/10/30
まちゃ
どんな経験したら、こんな視点の物語を書けるのかに興味が湧きました。宇佐美りんさんは、良いとか、悪いとか、面白いとか、面白くないとか、とは別次元の稀有な作家なんでしょうね。家族だから言ってしまうこと、言ってはいけないことがあると、あらためて考えさせられる物語でした。
2022/06/26
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