祝福
祝福 / 感想・レビュー
まみ
「解釈とは投げ出された無関係の破片である言葉を繕い繋げてあたかも連鎖するもののように仕立てることである。」短篇9篇、祝詞のような呪詛のような言葉が交錯する。目がすべって理解が追いつかない部分もあったけどたゆたうように読んだ。つるつるとしたカバーと真っ黒な見返し、金色の花布が素敵な本。
2023/09/24
佐倉
夢の中で見るような言葉が連なっていく文体による幻想連作集。リストカット癖のある少女が偶然受け取った言葉をブログに発表したものが新興宗教となり、多くの人々に時と空間を超えて言葉を届けていく『リスカ』。それはある者には架空の小説として『正四面体の華』、故人の言葉として『精霊の語彙』、詩として『縞模様の時間』。『定命さだまらず』はその始原にある願い…と言う風に読めるしあるいは受け取ったものを物語にしただけなのかもしれない。いや、それこほ『すべて明確に言い切ろうとした時の言い切れないところに魂はある』のだろうか。
2024/07/16
真琴
★★★★☆ 9つの短編が言葉によって伝播し繋がっていく。言葉が与える力が強く呪いのようにも思えた。ネット上であれ口伝えであれ人が言葉を発するとそれは外へと放たれ漂う。「言霊」という言葉があるように言葉に込められる気持ちは恐ろしいほどに大きいと思う。日本語を母語としていて良かったと思う反面、言葉を使うのが怖くもなった。(後で修正追記します)
2023/08/28
ハルト
読了:◎ 魂の祝福。言葉の祝福。精神と身体の言祝ぎ。思考することで産まれいずるものたちの言葉の連なりが、波のように大となり小となり、覆い被さってくる。それは連作の作品たちにも云えることで、かそけき繋がりが連面とあり、不可思議な現実感とそれに相反する非現実感をも作り出している。言葉によって生み出される事象に酩酊しながら、世界を想う。人を想う。冷静さがありながら、どこか夢うつつで、言葉の蜘蛛の巣に囚われたよう。愉しく酔えた。
2023/09/05
ゆう
関連をもつ短篇集。即興で書いたような疾走感のある作品もあれば(「リスカ」)、瞑想状態で書いたのかと疑う作品もある(「ガール・イン・ザ・ダーク」)。言葉に「呪」や「魂」を関連させるのは言葉を扱う作家だからだろうか。言葉に強い力を持たせる作品としては『幻詩狩り』に似ている。フィクション小説を書くなかでも、今作は霊的・精神的・哲学的な成分が濃く、『観念結晶大系』の視覚の鮮やかさを排除した言語SFのような感じで、これを何篇も書くのは大変だろうと思ったりした。期待通りに楽しめて良かった。
2023/08/06
感想・レビューをもっと見る