神曲 新装版
神曲 新装版 / 感想・レビュー
NAO
とても読み易い新訳は、ラテン語ではなく俗語とされていたイタリア語で格調高い文学を作り上げることを目的としていたダンテの意趣に叶っていると思う。ギリシア神話からの引用、実在の人物たちの悔悟の台詞、身近な生活からのたとえなど、さまざまなやり方で描かれる地獄はかなり生々しい。ただ、フィレンツェを追放された怒りのあまり、地獄篇や煉獄篇においてフィレンツェの風刺や批判をするだけでなく、天国篇でも天国に身を置く優れた聖人たちがこぞってフィレンツェの現状を嘆き痛罵するのは、行き過ぎの感がしないでもない。
2017/05/15
山口透析鉄
大学生の頃に、幾つかの訳を読みました。ちゃんと読んだのは寿岳文章氏のだったような。 当時の世界観を丸ごと入れ込んだ、名作中の名作です。現実の政治に敗れたダンテがこれをライフワークにした意味、やはりものすごいです。韻文で地獄・煉獄・天国編、ほぼ同じ長さで完成させていますから。 重要な単語の出てくる場所も周到に計算していますし。 小松左京氏の「虚無回廊」は1・2巻が私の高校生時に出ていて、ああSFで神曲に挑んだんだとすぐ分かりました。 オリジナルを読んだのは、その少し後でした。
1989/07/30
saeta
25年振りぐらいだろうか、家本を再読。全体的に平易の訳で読みやすく、各章の最後に訳注を配置してくれている親切な作りの本。中身を詰め込み過ぎてやや暑苦しく感じる地獄篇より、想像力を肉付け出来る余地がある煉獄篇の方が読んでいて楽しかったが。天国篇は、十三歌だったかトマス・アクイナスの辺りは良かったが、やはりキリスト教徒でも無いとなかなかこの世界観には入り込めないのでは。学術書扱いなのか菊判の単行本は持ち運びも不便だし重いな。
2022/04/20
ミヤト
一ヶ月近くかけて読了。他の訳よりは平易で読みやすかったが、知らない外国人や神の名前が多く登場し、すべてを正確に理解するのは厳しいものがあった。比較的地獄篇よりも後半の方が読みやすかった。地獄に落ちる条件があまりにも厳しいな、というのが正直な感想。ややもすると地獄に落ちる条件に引っかかりそうだ。難解な言葉がやや多かった。残念ながら半分近くは流し読みで済ませてしまった。内容があまりにも濃かった。ここまで規模の大きい空想の世界が何百年も前に作られていたというのは驚くべきことだ。清く正しくある必要性を再認識した。
2022/05/23
てれまこし
ルネサンスの先駆けとされるダンテも、ルネサンスを12世紀文芸復興からの流れで理解すれば無理なく収まる。ラテン文化の復興自体が12世紀なのだから、以来キリスト教文化と古典文化は常に居心地悪く同居してた。洗礼を受けなかった古代人は救済されるかとか、神の摂理によって運命が決まるのであれば人間の自由意志は何の意味か、などというダンテを悩ませた問いは、そのままルネサンスを通じて近代までヨーロッパ思想を形作る。封建制の時代に世襲貴族を批判したのも近代の先駆けに見えるが、中世においても伊では世襲は正当化が難しかったかも
2020/04/09
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