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ディフェンス / 感想・レビュー
Tonex
チェス馬鹿一代記。初期の作品だからか、ナボコフにしては読みやすい。主人公ルージンの暗黒の子供時代とか、チェスとの出会いとか、最強ライバルとのチェス対決とか、普通に面白い。ルージンのキャラが立っている。頭の中はチェスのことだけ。不器用、不衛生、不細工の三拍子そろったデブ。こんな男に惚れる女性がいるとは思えないが、ちゃんとヒロインが登場して、ロマンティック・コメディの要素も入っている。▼本当はチェスのルールを知らないと理解できないのだろうが、知らなくてもとりあえずは面白く読める。
2016/03/09
Tonex
再読。ナボコフの描くチェス馬鹿一代記。▼ストーリーがわかりやすいので1回読めば十分満足できるのだが、試しに再読してみた。やはり1回や2回読んだくらいでは気づかない仕掛け満載。やっぱりナボコフだ。また1回目は退屈に思えた後半の物語も2回目は面白く感じられた。▼208頁と233頁にちょこっと出てくるアルフョーロフ夫妻は『マーシェンカ』という別の小説の登場人物らしい。いわゆるカメオ出演?
2016/03/10
春ドーナツ
「正」を書いて勘定した訳ではないけれど、文中に「斑」が散りばめられている(百を超えるかも)。やはりチェスの盤面を連想します。市松模様を凝視していると、線と色がぼやけてマーブルになる。*「『最後の晩餐』に描かれている狭くて貧しい食卓の下で、残飯を漁っているおとなしい二匹の犬に彼(ルージン)の注意を向けさせた」(195頁)ん。*「(主人公は)柱の陰から群衆を眺めて十三本目の煙草をくゆらせていた」(200頁)ナボコフの注意喚起ー転調。そして、終局。蓄音機のキャビネットの上に大きな桃の種を置いた。チェックメイト。
2019/01/03
愛玉子
チェスの天才的な才能を持った少年、ルージン。彼は長じるにつれめきめきと頭角を現すが、あるとき試合で極度の緊張から精神のバランスを失い、チェスを捨てることになる。だがその時まで彼は気付かなかったのだ、彼こそが盤上に置かれたちっぽけな駒にすぎないということを。駒を意のままに動かすのは神、すなわちナボコフ。逃れられない手筋に追い詰められたルージンが打った最後の一手は、救済であり究極のディフェンスだった。ナボコフいわく、自分のロシア語の作品の中では最も温かさに溢れた作品、だそうだ。ああ、なんて嫌な男。
2010/02/22
そり
天才≒リミッターが壊れてしまった者?▼主人公ルージンは、チェスにのみ、ずば抜けた適性を持っていた。取り憑かれたようにのめり込むにつれ、いつしか現実と抽象世界が混同し始める。眠る時も頭の高速回転が止まらない。現実から意識の剥離が進むのに比例するかのように、彼はさらに強くさらに純度を増していく。▼小説とはいえ、現実にここまでのことがあり得るのか、と思った。だとしたら見てる世界が違いすぎる。天才ボビー・フィッシャーを彷彿させた。もしかして似た状態に陥っていたのか。
2014/03/24
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