回転する世界の静止点──初期短篇集1938-1949
回転する世界の静止点──初期短篇集1938-1949 / 感想・レビュー
ペグ
何年ぶりかの再読。人の心の深層を抉る鋭い作風は全く古びていない。1921年生まれとは!(大正10年!)「素晴らしい朝」はシリトーの「アーネストおじさん」を思い起こさせ切なくて美しい。殺人も起きず暴力的な場面も無いのに人の心は...ハイスミスにかかると何とスリリングなのだろう。
2019/03/06
星落秋風五丈原
余所者がやってきて素晴らしい町だ、やっていけそうだ、と思い始めた矢先、ある少女と親しくなった事がきっかけで町の人が遠ざかり始める。彼に原因があるのか、彼女に原因があるのかはっきりとは描かれない「素晴らしい朝」ある鞄の事が気になった男がやっと鞄を手に入れるが「不確かな宝物」何かが始まりそうな男女。でもその予想をふっと覆してしまう意地ワルなハイスミス「魔法の窓」ちょっとスパークの『ミス・ブロディ』に通じるところが在るハイミスの空回り。ハイスミスにしては珍しくコメディ「ミス・ジャストと緑の体操服を着た少女たち」
2016/01/13
メイ&まー
ごく短いお話ばかりだけど、どれもぐんと引き込む力が凄い。短い中にしっかりドラマがあって、静かに、だけど鮮やかに読み手を裏切ってくれる。大変な結末を迎えるものもあれば、表面上世界からみれば何も起こってないも同然なのだけど登場人物の中の何かだけが静かに崩壊して終わるものも。ラストの容赦ないぶったぎり感もなかなか。えっここで終わるの、とは思うけど、だから何だったの?と失望させることの無い説得力。これ作者の17~28歳までの作品・・・だけど老成された作家のような味わい。しかも何十年も前のものだけど古臭さ一切なし。
2014/12/08
mejiro
「素晴らしい朝」「不確かな宝物」「カードの館」「自動車」「回転する世界の静止点」「ルイーザを呼ぶベル」が特におもしろかった。ストーリーの発端は、ささやかな出来事だったりする。それをきっかけに、たとえ気がつかないほど小さくても、登場人物の中で確かな変化が起きる。心理や行動を洞察し文章にする力がすごい。多様な短編集。執筆時の著者の若さとこれらの作品が単行本未収録なのに驚いた。表紙が印象的。
2017/04/09
ペグ
初期短編集の14作品全てに駄作無し。という。恐るべしハイスミス!特に好きだったのは(不確かな宝物)(カードの館)(ルイーザを呼ぶベル)全ての作品には主人公の想像や思い込みをあっさりとひと撫でして去って行く現実。各作品全てが余韻を残しました。
2015/09/18
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