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小鳥たちが見たもの

小鳥たちが見たもの

小鳥たちが見たもの

作家
ソーニャ・ハートネット
金原瑞人
田中亜希子
出版社
河出書房新社
発売日
2006-12-12
ISBN
9784309204703
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小鳥たちが見たもの / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

発端はハーメルンの笛吹きの如く、神話的かつフォークロアのようなエピソードに始まるのだが、それはいつしか物語の深層に沈潜してゆく。同じく、海の怪物のニュースもまた時々は浮上はするものの、やはりどこかに溶解してゆくのである。ファンタジックであるといえばそうなのだが、見方を変えれば曖昧なままに終始する小説でもある。主題を背負うのはエイドリアンの孤独と疎外なのだろうが、それならそれで夾雑物がない方がとも思うのである。つまるところ、私には難解というよりは不可解な小説であった。

2017/04/17

かりさ

再読。イベントの鳥本で真っ先に浮かんだのがこの作品でした。ちょうど10年前に読みましたが、今でもこの静謐さ、孤独さ、哀しみが忘れられずにいます。寄る辺ない寂しさ、必要とされてないと固く信じてしまう孤独と不安。眩しいくらいの光に包まれてその存在は必要とされる場所へと導かれたのでしょうか。今にも壊れそうな少年の心の機微を細やかに描き、その繊細さに胸が潰れそうになります。とても静かで音のない世界なのにこんなにも心揺さぶられ、深く杭を穿たれるような思いを残す物語。小鳥たちだけがそっとついばむその結末。

2017/02/04

藤月はな(灯れ松明の火)

子供たちが突然、消えてしまうという事実が起きてしまう。喪われた者という過去を求め、今に目を向けない大人たちによって子供たちの心は静かに孤独に擦り切れてしまう。そして・・・。母は精神を病み、実父に捨てられ、年のため、不器用にしか接せられない祖母の家でも居場所がないエイドリアンの孤独、自死しようとしたホースガールをはやし立てる子供達のギリギリまで我慢された叫びと残酷さが辛くて寂しい。誰もが辛くて未熟。だけど、もっと他にやり様はなかったのかと問いかけてしまうのは私も未熟だからだろう。灰色の男の正体に愕然。

2016/05/09

エンブレムT

街には「消えた3人の子供」のニュースが流れていた。憔悴した彼等の両親を見て、9歳のエイドリアンは衝撃を受ける。「誰かにあんなに必要とされるなんて」それは自分には向けられる事のない愛情の表れだったから・・・。繊細で美しい文章が、少年の恐怖と不安と孤独を容赦なく浮き彫りにしていく。ページを捲っても捲っても辿り着くべき場所が見えず、不安だけが大きくなっていく。そこにはシン・・・と静まり返っていくような世界が広がっていた。小鳥たちは空へ羽ばたいたのだろうか。ここではない、どこかを目指して。

2010/06/09

小夜風

【図書館】子どもの連れ去り事件が多発している今、ある日突然子どもが消えてしまうなんてどれ程の恐怖だろうと考え、心が萎縮する。今はどうしても母親目線で読んでしまうけど、子どもの頃に確かにエイドリアンのような気持ちを味わっていた気がします。9歳といったらうちの末っ子と同じ歳…エイドリアンを苦しめ押し潰そうとした全てを取り払い、抱き締めてあげたかった。悲しいお話…。

2014/10/22

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